研究課題
細胞壁テイコ酸(WTA)を輸送するTagGHが細胞側壁にパッチ状に局在し、TagHの膜貫通領域が高温でのパッチ状の局在性に重要な役割を担っていることを論文として報告した。さらに本年度はWTAリガーゼであるTagTUVについて詳細に調べた。まずそれぞれのタンパク質の共局在性について調べた結果、TagTとTagVは約82%の高頻度で共局在していた。一方、TagTとTagUは約60%、TagVとTagUは約58%程度の共局在性を示した。このことから大部分のTagTとTagVは同じ場所で働いているものの、TagUは若干異なる場所で機能している可能性が示唆された。この結果をサポートするように、TagTおよびTagVの単独発現株は、野生株とほぼ同様の生育および形態を示したのに対し、TagU単独発現株の生育は野生株と比べて若干低下し、細胞分裂に異常が見られるフィラメント状の細胞形態を示すことを見出した。次に、細胞増殖において重要な細胞壁溶解酵素LytEとCwlOの局在性について調べた。これまでの研究により、LytEは細胞側壁にらせん状に局在していることが明らかになっているが、CwlOの局在性は明らかにされていなかった。CwlOは膜タンパク質であるFtsEXにより活性を制御されているため、CwlOのC-末端に6xFLAGタグを融合させた株を構築し、細胞膜近傍の局在性を観察したが、明確な蛍光は観察されなかった。そこでCwlOのN-末端に6xFLAGタグを融合させたところ、細胞膜近傍で明確なパッチ状の蛍光が観察された。同様にFtsXの局在性についても観察した結果、細胞側壁においてパッチ状に局在していた。これらの結果から、合成致死性を示すLytEとCwlOの局在パターンは、それぞれ異なっている可能性が明らかになった。今後は分泌直後のLytEの局在パターンを明らかにする予定である。
2: おおむね順調に進展している
新たな標識ペプチド配列であるMycタグが機能し、FLAGタグとの共染色観察も可能になった。この手法を用いて、3種類のホモログが存在するWTAリガーゼTagTUVについて詳細な観察を行った。その結果、それぞれの共局在性が若干異なったため、何らかの役割分担があるかもしれない可能性が示唆された。さらにTagU単独発現株は顕著な形態異常を示したことから、TagTのみでは他のWTAリガーゼの機能を完全に相補できないことが明らかになった。また、細胞側壁の限定分解に機能する細胞壁溶解酵素CwlOの局在性を観察することが可能となり、もう一つの溶解酵素であるLytEの局在性とは異なるパターンであることが解った。
研究計画に従って、主要なLTA合成酵素であるLtaSとWTA輸送タンパク質であるTagHとの共染色を実施し、細胞表層における新規LTA修飾部位とWTA修飾部位の位置関係を明らかにする。また、高温条件におけるWTA合成酵素およびLTA合成酵素の局在性の変化について調査するとともに、LTA欠損株の高温耐性が低下する原因についても明らかにすることを試みる。さらにLytEおよびCwlOの分泌直後の局在パターンが、時間経過とともにそれぞれどのように変化するのか観察する。またこれらの細胞壁溶解酵素が細胞表層の同じ部位で機能しているのかどうか共染色により明らかにする。さらに新規細胞壁合成部位で作用しているのかを明らかにするために、PbpAおよびPbpHとの共染色を試みる。
すべて 2018
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Microbiology
巻: 164 ページ: 935-945