本年度は細胞内におけるWTA合成酵素群の中で、リンケージユニット(LU)を合成するTagOおよびポリグリセロールリン酸(poly-GroP)を合成するTagFに関して、それらの共局在性を調べた。その結果、約88%の共局在性を示したことから、LUとpoly-GroP主鎖の合成は細胞内の同じ場所で行われている可能性が明らかになった。次にTagHとWTAリガーゼであるTagTは約58%の共局在性を示した。これはWTAリガーゼにはTagTの他にTagU/Vがあり、それぞれの共局在率は60~80%であることから、TagHとTagTの共局在率が低下した可能性が考えられた。 また栄養増殖期に発現しているLTA合成酵素LtaSとYfnIについて共局在性を調べたところ、約62%の割合で一致していたことから、両酵素は一部異なる部位でLTAを合成している可能性が示唆された。さらにLTA特異的抗体を用いて、それぞれのLTA合成酵素との局在性を調べた結果、LtaSとLTAは62%、YfnIとLTAは59%が一致していた。 一方、細胞増殖において重要な細胞壁溶解酵素LytEとCwlOの分泌直後の局在性について調べた。CwlOの発現を人為的に誘導したところ、誘導5分後からパッチ状の蛍光が観察され、その後時間が経過しても局在パターンに変化は見られなかった。一方、LytEは誘導5分後にはパッチ状に局在し、その後らせん状の局在パターンへと変化した。このことから分泌直後のCwlOとLytEはパッチ状に局在するが、その後の局在パターンは変化することが明らかになった。さらに分泌直後の両酵素の共局在性を調べた結果、約62%の共局在性を示していた。このことから分泌直後の両酵素は、大部分は同じ部位ではたらいているものの、一部異なる部位でも機能している可能性が示唆された。
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