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2018 年度 実施状況報告書

ギ酸デヒドロゲナーゼを用いた新規人工炭酸固定系

研究課題

研究課題/領域番号 17K07717
研究機関信州大学

研究代表者

伊原 正喜  信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (50391868)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードギ酸 / 二酸化炭素固定菌 / 水素 / 微生物
研究実績の概要

本プロジェクトでは、水素分子とギ酸をエネルギー源且つ還元力、炭素源として利用し、気相中の二酸化炭素を効率よく固定する微生物の開発を目標としている。2018年度には、①ギ酸資化の鍵酵素であるギ酸デヒロドゲナーゼの改良、および②室温・静置培養にて高い二酸化炭素固定能を示すバクテリアの探索に取り組んだ。
①については、2017年度までに安定性について改良に成功したギ酸デヒドロゲナーゼ変異体が得られていたが、さらなる安定化と活性向上を目指して、表面ループや表面付近の空隙などを構成する10個のアミノ酸に、さらなる変異を導入した。その結果、比活性に関して約4倍の改善に成功し、4℃での48時間後の残存活性も約2倍となった。
②に関連して、水素細菌による二酸化炭素固定の課題が、ガス(水素、酸素、二酸化炭素)の低い溶解度にあり、それを克服するために激しい攪拌が必要であることに着目した。天然には、バイオフィルムを形成し水面に浮遊する株がよく見られるが、これらの株は、水面付近に高い細胞密度を実現することで、ガスの取り込みを効率化していると考えられる。そこで、激しく攪拌しなくとも、浮遊性バイオフィルム形成株の静置培養において高い二酸化炭素固定を実現できると考えた。また、これまでの水素細菌では30~37℃で培養されることが多かったが、培養温度維持のためのエネルギーも問題になる。実用には、たとえば、温度が安定している地下に培養層を設置することが好ましいと考え、15~20℃付近で、且つ浮遊性バイオフィルム形成能を有し、高い二酸化炭素固定能を有する水素細菌の探索を行った。その結果、多数の株を単離でき、最も優れた4株について、20℃、混合気体(水素:酸素:二酸化炭素=8:1:1)下での攪拌培養と静置培養によるバイオマス生産性を比較したところ、静置培養でより高いバイオマス生産能を発揮する2株を同定した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ギ酸資化の鍵酵素であるギ酸デヒドロゲナーゼの改良研究は、世界でも例がなく、我々独自の研究であるが、2018年度には大きな進展が見られた。これまで、安定性と活性が低く、精製が困難であったが、今回の進展によって、粗精製やギ酸生成実験などの実験が可能になった。
また、15~20℃という低温で高い二酸化炭素固定能を有し、また浮遊性バイオフィルム形成能を持つため激しい攪拌を必要としないため、極めて低エネルギー低コスト培養を可能にする二酸化炭素固定菌の単離に成功した。

今後の研究の推進方策

今後は、改良ギ酸デヒドロゲナーゼを用いて、光合成反応中心と組み合わせた光駆動ギ酸生産実験や、単離した新規株への導入を試みる予定である。特に、二酸化炭素固定の律速は、カルビンサイクルであることから、セリンサイクルなどで効率よくギ酸資化と二酸化炭素の取り込みを行う新規株の単離を試みており、これらの株への導入を考えている。
低温適応浮遊性バイオフィルム形成株については、株の同定や、各ガス(水素、酸素、二酸化炭素)取り込み速度の定量化し、特許出願などを予定している。

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公開日: 2019-12-27  

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