研究課題/領域番号 |
17K07719
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
梅影 創 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (30419436)
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研究分担者 |
菊池 洋 早稲田大学, 理工学術院, 教授(任期付) (40273320) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 菌体外RNA / RNA生産 / AHL / クオラムセンシング |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、ロドブルム属細菌の生育方法の検討を行った。本細菌は、アシルホモセリンラクトン(AHL)を用いて細胞間コミュニケーションを行うこと、また、これにより菌体外核酸ン生産がコントロールされている知見から、ゲノム情報からAHL生産遺伝子の探索およびAHLの同定を行った。AHLを生産する遺伝子についてはBLASTサーチから2つ候補が見つかった。また、AHLについてはLC/MS/MSから新規のAHL(C20-OH-HSL)であることが判明した。従来のAHLのアシル鎖はC18までが報告されていたが、本細菌はアシル鎖がC20と最も鎖長の長いAHLであることが判明した。さらに、もちこのAHLが細胞間コミュニケーションに用いられているのかを確かめるため、AHL検知株を用いて検証したところ、確かに細胞間コミュニケーション物質として働くことが確かめられた。本菌は上記AHL以外にアシル鎖がC20のAHLをもう一種類生産していることも確かめられたが、現時点ではその構造式を同定するには至っていない。これについては、今後も引き続き同定を目指した研究を行う予定である。 我々の方法(本菌を用いて菌体外に機能性RNAを生産させる方法)を用いてデタラメな成果を発表している外国の研究グループがあり、このために我々の研究成果が不当に低く評価されることが懸念されたため、微生物を用いて機能性RNAを生産させる手法に関する総説を執筆する際にこの件に触れ、我々の研究の優位性をアピールした(レビュアーからも我々の主張が正当なものと認められている)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本菌の生産するAHLの同定に想定以上の時間が掛かってしまい、本菌の菌体外生産能向上に向けた育種を十分行うことができなかった。ただし、ロドブルム属細菌の生産するAHLの同定自体は新規の発見であり、クオラムセンシング研究分野の裾野を広げる重要な成果であると自負している。
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今後の研究の推進方策 |
ロドブルム属細菌の培養液にシクロデキストリンを添加するとシクロデキストリンがAHLを包摂し、その結果として本菌の菌体外核酸生産能が向上することが分かっている。本手法は、大量培養に適していないため、培養液へのシクロデキストリンの添加に替わる方法として、本菌のAHL生産遺伝子の破壊を行う。具体的には、これまでに開発してきた富栄養培養条件下においてもフロックを形成する変異体のAHL合成遺伝子を上記手法によって破壊し、菌体外生産能の向上を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
AHLの同定に予想以上に時間が掛かってしまい、本研究の進展が遅れた。このため本年度研究の使用額が少なくなり、次年度使用額が生じた。
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