研究課題/領域番号 |
17K07724
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
加藤 伸一郎 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 准教授 (60346707)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 硫黄代謝 / トレーサー |
研究実績の概要 |
偏性嫌気性細菌Clostridium acetobutylicum NBRC13948の無細胞抽出液にクロラムフェニコールを加えてタンパク質の合成を阻害した。これにL-[35S]システインをトレーサーとして加え、内在性のシステインデスルフラーゼの硫黄生成反応を介することにより、硫黄の転移反応に関与するタンパク質の網羅的な検出を試みた。SDS-PAGEに供した後、オートラジオグラフィーにて解析を行った結果、L-システインに由来する35Sにより特異的に放射標識されるタンパク質の存在が複数認められ、硫黄原子の転移が生じていることが想定された。これらのタンパク質の放射標識量は還元剤であるトリス(2‐カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩の添加によって有意に減少することから、「ペルスルフィド構造」を有していると考えられる。これらの放射標識量の経時的な変化について調べたところ、システイン添加直後(~5分)がピークとなる2種のタンパク質の存在が認められる一方で、システイン添加後10分以降から徐々に放射標識量の増大が見られるタンパク質群の存在も確認された。このような35S標識特性の違いは、個々のタンパク質が関与する硫黄原子転移反応が画一的なものではないことを示唆するとともに、それぞれのタンパク質の生理的機能や作用段階を反映したものであると考えられた。検出されたタンパク質については一次構造の解析による同定作業を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の想定通り、L-[35S]システインと内在性のシステインデスルフラーゼを組み合わせた硫黄生成反応をin vitroにて起こすことができた。また、硫黄転移反応を意味する35S放射標識を示すタンパク質が検出されたことから、今後は、システインデスルフラーゼとこれらのタンパク質の間の硫黄転移反応の機序解明に取り組むことができる。
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今後の研究の推進方策 |
35S放射標識を示すタンパク質について同定作業を進めるとともに、遺伝子をクローン化し大量発現系を構築して精製標品を調製し、in vitroで硫黄転移反応を再現する。この過程で必要とされる因子(他のタンパク質、低分子化合物・金属などの補因子等)や条件(pHなど)を検討し、最適化を試みる。また、35S放射標識を示すタンパク質をコードする遺伝子を破壊して、生育速度や栄養要求性など表現型に与える影響を詳細に解析し生理的な機能の解明を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度実施予定の実験については、幸いなことに使用予算分の購入試薬にて実施することができた。生じた次年度使用額は、タンパク質の同定実験に必要となる試薬類の購入に充てる予定である。
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