大腸菌のYhjBは二成分制御系の応答制御因子と相同なタンパク質である。本研究課題において、yhjBの破壊株がプラスミドベクターで強制発現させた異種蛋白質を過剰生産することを見出した。当初は再現性が見られた本現象は、詳細な解析の結果、yhjB遺伝子の欠損によるものではなく、プラスミドベクターを形質転換する際、形質転換体毎にそのコピー数がバラつくためであることが判明した。以下、YhjBの機能解析と形質転換のバラツキに関して報告する。 yhjBの周辺遺伝子の解析を行った結果、yhjB遺伝子の近傍にyhjDを見出した。YhjDはリボソーム依存型ATPaseであるRbbAと相互作用するinner membrane proteinである。RT-PCR法により、yhjB破壊株ではその親株BW25113株と比べ、yhjDの転写量が0.39倍に、rbbAの転写量が0.27倍に減少していることが判明した。以上より、YhjBは近傍に存在するYhjDおよび、RbbAの転写を制御する可能性が示唆された。 yhjB遺伝子欠損株はBW25113株と比較し、蛋白質を多量に生産したが、その再現性が得られなかった。そこで、E. coli BW25114とyhjB遺伝子欠損株にそれぞれpUC19を質転換し、各形質転換体のプラスミド収量を比較した。その結果、yhjB遺伝子欠損株のプラスミド収量の平均は、BW25113株のそれよりも低かった。また、驚くべきことに、形質転換体毎にプラスミドの収量が大きく異なることが判明した。研究初期の蛋白質を高生産するyhjB遺伝子欠損株の形質転換体は、プラスミドのコピー数が多いものが偶然、選ばれたものあったと推測できる。興味深いことに、形質転換時に決定されたプラスミドのコピー数は、植え継ぎにより継代されることが判明した。
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