サーモプラズマ酵素への変異導入による基質認識残基の検証において、5つの保存領域中、保存領域1に保存されているアミノ酸を類似アミノ酸へ変換し、触媒活性を調査した。調べた変換体の多くの熱転移温度が20℃近く減少し、不安定な構造へと変化していることと変換したアミノ酸の重要性が示唆された。一方で、熱転移温度は変化せず、不活化した変換体 (TrpとAsp) があり、これらのアミノ酸が触媒活性に重要であることがわかった。興味深いことに、これらのアミノ酸は、グルコアミラーゼ(GA)にも保存されており、-1サブサイトのGlcとの相互作用があると示唆された。他の保存領域の調査に関しては、今後の課題であり、N末端ドメインとC末端触媒ドメインを入れ替えたキメラタンパク質の触媒活性が著しく減少したことから、N末端ドメインの酵素活性の影響も調べていく必要がある。その中で、N末端ドメイン単独タンパク質の発現に成功し、微弱ながらも不溶性多糖と結合する結果を得た。 触媒活性の程度が異なるスルフォロバス酵素間の共通点を探るべく、推定触媒残基および隣に位置するアミノ酸変換の影響を調べたところ、両酵素に共通する結果を得た。 サーモプラズマ酵素の結晶化条件を検討し、弱酸性条件において結晶を観察できたが、残念ながら解像度が約3Åであり、分子置換法では解析まで至らなかった。今後、近い条件を含めた検討とセレノメチオニン導入による回折決定が必要と考える。 逆反応によるトレハロース類似物の合成については,触媒残基変換酵素を用い、糖供与体をフッ化グルコースへと変更して試験したが、中性条件では再現性良く合成物を得ることが出来なかった。GAでは、上で記載したAsp残基が水分子を捕捉するアミノ酸として報告されていることから、このアミノ酸を変換した酵素を用い、加水分解活性を最小限にした酵素の作製と弱酸性側を含め今後継続試行する。
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