研究課題/領域番号 |
17K07730
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
鳴海 一成 東洋大学, 生命科学部, 教授 (90343920)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | DNA修復タンパク質 / 放射線抵抗性細菌 / DNA損傷誘導性 / ゲノム2本鎖切断修復 |
研究実績の概要 |
放射線誘導性タンパク質DdrA及びそのパラログDdrAPの構造機能解析の一環として、D. radiodurans ddrA遺伝子及びddrAP遺伝子の欠失株を作製した。具体的には、ddrAプロモーター上流750 bp、カナマイシン耐性マーカー1,065 bp、D. radiodurans ddrA遺伝子下流領域750 bpを、4種類の異なる制限酵素切断部位タグ付きプライマーでそれぞれPCR増幅後、制限酵素処理とライゲーションでタンデムに連結したDNA断片を用いて、D. radiodurans野生株(ATCC13939)を形質転換し、ddrA欠失株を作製した。また、D. radiodurans ddrAP遺伝子についても同様にして、ハイグロマイシン耐性マーカーとすげ替えた形のddrAP欠失株を作製した。作製したddrA遺伝子欠失株はマイトマイシンCに対して中程度の感受性を示したのに対して、ddrAP遺伝子欠失株はマイトマイシンCに対して僅かな感受性を示した。パルスフィールドゲル電気泳動によるゲノム2本鎖切断修復過程の解析については、供試する細胞濃度、アガロースゲルプラグの調製、プロテイナーゼK処理及び制限酵素NotI処理の条件検討を行い、最適条件を決定した。タンパク質の精製については、D. radiodurans ddrA構造遺伝子領域をPCR増幅したものをpET9aベクターのNdeI-BamHI部位にクローニングし、大腸菌BL21(DE3)をpLysSプラスミドと共に形質転換することで、発現系を構築した。IPTG誘導でnative formのDdrAタンパク質が可溶性画分に大量に生産されていることを確認した。さらに、真核生物のDNA修復タンパク質Rad52との相同性が見られるDdrAタンパク質のアミノ酸末端から157番目の残基までからなる欠失変異型タンパク質DdrA157についても同様に、大腸菌BL21(DE3) pLysSの発現系で可溶性画分に大量に生産させることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ddrAとddrAPの二重遺伝子欠失株がまだ作製できていない。二重遺伝子欠失が細胞にとって致死的であることも考えられるが、平成29年度の実験で明らかになったマイトマイシンCに対する感受性の程度を勘案すると、二重遺伝子欠失株の取得は可能であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
D. radioduransは多倍体ゲノムを持つので、二重遺伝子の完全欠失が細胞にとって致死的である場合でも、複数コピーの遺伝子の一部のみが欠失した形のHemi欠失株であれば取得できる可能性が高いため、選択マーカーの濃度等を勘案しながら、ddrAとddrAPの二重遺伝子欠失株の取得を急ぐ。
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次年度使用額が生じた理由 |
ddrAとddrAPの二重遺伝子欠失株がまだ取得できていないため、変異原感受性試験に要する消耗品費を次年度に使用する必要が生じた。当該二重遺伝子欠失株を平成30年度に取得した後に、変異原感受性試験に要する消耗品費を使用する計画である。
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