1)光化学系Ⅱ標品と光化学系Ⅰ同時精製の試み: 乾燥ストレスにシアノバクテリア細胞を曝したときにおこる光合成系の変化を調べるためには、光化学系Ⅱと光化学系Ⅰ両方を単離する必要があった。そこで、シアノバクテリアのSynechocystisの光化学系Ⅱの構成タンパク質にHisタグを付与した株を用いて、光化学系Ⅱと光化学系Ⅰの同時精製を試みた。遠心で回収した細胞を破砕して得たチラコイド膜をドデシルマルトシドで可溶化し、Niカラムに吸着した画分から光化学系Ⅱ標品を精製した。また、Niカラムを素通りした画分を濃縮し、これをグリセロール密度勾配遠心することで、光化学系Ⅰ標品を回収・精製した。本法で得られた光化学系Ⅰ標品は従来の方法で単離した光化学系Ⅰ標品とタンパク質組成は同じであったため、光化学系Ⅱと光化学系Ⅰの同時精製はうまくいったと考えられる。 2)高張処理したときの電子伝達活性の変化:2種のシアノバクテリアSynechocystisとAnabaenaをソルビトールで高張処理したときの光合成特性の変化を解析した。高張処理は乾燥処理を近似することができることが報告されている。0-1.0 Mソルビトールを含むBG-11培地でSynechocystisおよびAnabaenaをそれぞれインキュベートし、電子伝達活性の変化を調べた。Synechocystisでは高張処理で光化学系Ⅱの電子伝達はあまり失活せず、光化学系Ⅰを含むその下流が不可逆に失活したが、Anabaenaでは高張処理で光化学系Ⅱとその下流の電子伝達の両者が不可逆に失活した。Anabaenaが乾燥耐性を示す理由として、光化学系Ⅱ反応を積極的に低下させ、光化学系Ⅱの還元側もしくはその下流で活性酸素の生成を抑えている可能性が示唆された。通常のSDS-PAGE解析では高張処理の有無で光化学系のサブユニット組成に差はみられなかった。
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