研究実績の概要 |
本研究は、廃食用油を原料としたポリマー生産系構築に資する酵素遺伝子の獲得を目的としている。具体的には、(1) オレイン酸からシクロオクタノン,8-オクタノリドを経由し,ポリ(8-オクタノリド)を合成する系に資するシクロオクタノンモノオキシゲナーゼ遺伝子、 (2) オレイン酸からシクロヘキサンカルボン酸 (CHCA) を経て4-ヒドロキシCHCA,4-ヒドロキシ安息香酸,プロトカテキュ酸,2-ピロン-4,6-ジカルボン酸を合成する系に資するCHCA芳香族化経路遺伝子を標的としている。2019年度の実績は、以下の通りである。 (1) 大腸菌で発現したExophiala jeanselmei KUFI-6N (酵母様真菌) 由来のシクロアルカノンモノオキシゲナーゼ (CAMO) の特性を解析し、当該酵素は4から10員環のシクロアルカノンをはじめとして広範囲のケトンに対して活性を有することを明らかにした。 (2) Corynebacterium cyclohexanicum MU株由来のCHCA芳香族化に関与する酵素の特性を解明するため、大腸菌で発現した各酵素の特性を解析した。その結果、4-ケトCHCAから4-ヒドロキシ安息香酸への芳香族化反応は1つの酵素 (ChcC1) のみで進行するが、ChcC1のみでは中間体が蓄積し、4-ヒドロキシ安息香酸への変換率が低いことがわかった。Corynebacterium cyclohexanicum MU株の無細胞抽出液による反応ではスムーズに4-ヒドロキシ安息香酸が生成することから中間体から4-ヒドロキシ安息香酸への変換に関与する酵素が存在することが示唆された。また、昨年度決定したParaburkholderia属細菌のゲノム配列からCHCA芳香族化経路に関与する遺伝子の候補遺伝子を検索し、大腸菌異種発現により標的酵素遺伝子を特定した。
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