研究課題/領域番号 |
17K07737
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
東 慶直 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (90333509)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 宿主-寄生体相互作用 |
研究実績の概要 |
クラミジアの感染や増殖に大きな影響を与えるアポトーシス促進因子であるApaf-1とCaspase-9と物理的相互作用するクラミジア因子を明らかにするため、酵母2-hybrid法に用いる肺炎クラミジア全遺伝子ライブラリーを構築した。まず、肺炎クラミジアが有する全1072遺伝子のDNA配列をPCRにより個別に増幅した。そのDNA断片と線状化した酵母2-hybrid法ベクターを混合し、酵母に導入することにより酵母内で相同組換えによって遺伝子クローニングした。現在のところ、30遺伝子が単独で酵母2-hybrid法において陽性を示したため、それを除く1042遺伝子を保有する個別の酵母ラインを肺炎クラミジア全遺伝子ライブラリーとした。まず、このライブラリーを用いて、Caspase-9と相互作用するクラミジア遺伝子の探索を実施した。結果として、機能未知な2遺伝子,グリコーゲンの下合成に係わる2遺伝子、外膜タンパク質遺伝子の合計5遺伝子が分離された。これまでCaspase-9は封入体内に局在し、さらにCaspase-9はクラミジア菌体に結合し共沈殿することを実験で示してきた。外膜タンパク質はクラミジア菌体と封入体内を区分するタンパク質であり、その外膜タンパク質とCaspase-9の相互作用は極めて興味深い。今後、Caspase-9によるクラミジア感染の促進効果との関連を詳細に検討する必要がある。また、クラミジアは封入体にグリコーゲンを蓄積することが古くから知られており、Caspase-9とグリコーゲン合成の関連も興味深い。最後に機能未知な遺伝子産物にいて、そのタンパク質を大腸菌において合成し精製した上で、プルダウン実験を行ったところ、Caspase-9と共沈殿することが明らかとなった。これら機能未知な遺伝子についても詳細な検討を進めたい。さらに、Apaf-1についても同様の実験を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酵母2-hybrid法に試用するための肺炎クラミジアの全1072遺伝子を個別にクローニングした酵母ライン(肺炎クラミジア全遺伝子ライブラリー)を構築した。その肺炎クラミジア全遺伝子ライブラリーから酵母2-hybrid法によって、Caspase-9と相互作用するクラミジア遺伝子を合計5遺伝子分離した。また、部分的ではあるが、プルダウン実験などによりその相互作用を確認した。その結果はすでに国際誌に発表した。さらに、Caspase-9と相互作用するクラミジア遺伝子として外膜タンパク質遺伝子が分離されことに触発されて、肺炎クラミジアが有する外膜タンパク質遺伝子30について、ヒトのcDNA発現ライブラリーを用いて酵母2-hybrid法によって相互作用する遺伝子の分離行った。また、Caspase-9と相互作用する遺伝子として分離されたグリコーゲン合成遺伝子について、その遺伝子を大腸菌で発現させタンパク質を調製し、抗体を作成した。この抗体を用いて、クラミジア感染とグリコーゲン合成の関係を調べているところである。また、この抗体によるクラミジア感染の中和実験も進めている。Apaf-1については最終年度の課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
肺炎クラミジア全遺伝子ライブラリーとして酵母2-hybrid法によって、Caspase-9と相互作用するクラミジア遺伝子の探索を実施し結果、機能未知な2遺伝子,グリコーゲンの下合成に係わる2遺伝子、外膜タンパク質遺伝子の合計5遺伝子が分離された。それぞれの遺伝子産物の抗体を作成して、タンパク質蓄積のプロファイルを理解し、感染への関与を明らかにする。それらの抗体を用いて、感染を中和できるか詳細に検討する。一方で、前駆体のCaspase-9は、宿主クラミジアによって活性化されることを実験で示してきた。しかし、その活性化機構と活性化されたCaspase-9がいずれかのタンパク質を分解するか不明である。それらの点について詳細な検討を実施する。また、Caspase-9とグリコーゲン合成の関連も詳細に検討する。さらに、Apaf-1について、Caspase-9と同様に酵母2-hybrid法を用いて相互作用するクラミジア遺伝子の探索する。得られた結果に従い、Apaf-1と相互作用するクラミジア遺伝子の詳細な解析を実施する。
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