これまでに肺炎クラミジアは宿主のアポトーシス促進因子であるApaf-1とCaspase-9の存在によりその感染が制御されることを明らかにしてきた。そのApaf-1とCaspase-9と物理的相互作用するクラミジア因子を明らかにするため、肺炎クラミジアが有する全1072遺伝子について、酵母2-hybrid法に用いるライブラリーを構築した。DNA配列をPCRにより個別に増幅した。その肺炎クラミジア全遺伝子ライブラリーを用いて、Caspase-9と相互作用するクラミジア遺伝子の探索を実施したところ、グリコーゲンの合成に係わる2遺伝子と外膜タンパク質遺伝子2遺伝子を含む合計5遺伝子が分離された。これまでに我々の研究によって、宿主Caspase-9は肺炎クラミジア感染下において封入体内に誘導され、Apaf-1非依存的に活性化し、肺炎クラミジアの感染を促進することが明らかとなっている。そのCaspase-9と相互作用することが示されたクラミジアの外膜タンパク質2種類は、試験管内の実験においてCaspase-9とそれぞれ共沈殿することが示された。その外膜タンパク質はクラミジア菌体と封入体内を連携するタンパク質であると考えられ、Caspase-9の宿主細胞室からクラミジア封入体への輸送やCaspase-9の活性化と関係することが考えられる。一方、クラミジアは封入体内にグリコーゲンを蓄積することが古くから知られている。しかし、そのグリコーゲンの蓄積と感染の関係は全く報告がない。そこで、Caspase-9と相互作用することが示された5種類のタンパク質についてタンパク質を調製し、抗体を作成した。現在はそれらの抗体を用いて、それらタンパク質の挙動を観察するとともに、感染の阻害に関しても実験を進めている。また、封入体内で活性化いしたCaspase-9がいずれかのタンパク質を活性化するか検討している。さらに、Apaf-1についても同様の実験を進め、すでに興味深い結果を得ている。
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