研究実績の概要 |
メタノール資化性菌Methyrobacterium属やMethylorubrum属細菌は、植物からの地球規模では一億トン/年を超える放出量があると見積もられるメタノールを炭素源やエネルギー源として利用する。これらの共生細菌は植物由来メタノールを葉上で直接利用して生育するため、この獲得のために植物の生育を促す様々な手段を講じている。例えば植物に対して生理活性を有する様々な化学物質を供給 したり、効率よくメタノールを得るために植物体上の環境(根圏や葉上など)を認識するためのメカニズムを有していたりすることが明らかになってきている。そこで本研究ではこのメタノール資化性細菌が植物とともに生育し、その植物の生育状況に応じた生育環境認識機構を有することを明らかにすることを目的としている。このメカニズムは微生物生態学的な意義だけでなく、農産物の効果的栽培や病原菌防御効果につながるものと期待している。 本年度は本計画の最終年度であり、これまで同様Methylorubrum extorquens AM1株をモデル細菌として用い、研究を行った。特に昨年度に生育環境を模してランタノイド濃度や、炭素源により様々な条件を作成して、遺伝子の発現誘導条件を検討してきたメタノールデヒドロゲナーゼの3種のアイソザイムについてさらなる検討を加えた。MxaFI, XoxF1, XoxF2はタンパク質の一次構造上、高い相同性を有し、いずれもメタノールをホルムアルデヒドへと酸化する触媒活性を有するが、炭素源やランタノイドに対する応答が異なることを明らかにした。この発現条件が土壌から葉上にかけて形成されるランタノイド勾配に対応する発現条件と対応することが示唆された。
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