研究課題/領域番号 |
17K07743
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
坪内 泰志 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 特任講師 (30442990)
|
研究分担者 |
浦井 誠 東京農業大学, 生命科学部, 准教授 (20398853)
金子 幸弘 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (90469958)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 抗薬剤耐性菌物質 / 海洋性放線菌 / 抗MRSA/VRE / 遺伝子発現解析 / 分子間相互作用解析 / 構造解析 |
研究実績の概要 |
平成29年度ではStreptomyces sp. Spo05株のトランスクリプトーム解析を行った。鋳型として前申請課題において解読した同菌株の完全長ゲノム配列を採用し、同配列にマッピングを行った。Spo05株の培養時期別でTotal RNAを抽出し、その遺伝子発現強度の差異で生合成遺伝子群や生合成経路の同定を試みた。増殖曲線初期(培養時間:0hr, 抗菌活性:なし)、中期(培養時間:36hr, 抗菌活性:微弱)、および後期(培養時間:108hr, 抗菌活性:あり)での三群間比較を行った結果、SAM (S-adenosyl-methionine)-dependent methyltransferaseやradical SAM proteinなどの遺伝子発現の増強が確認された。前者は生体分子にメチル基を転移させる酵素であり、二次代謝産物などの制御に寄与すると考えられている。また後者は鉄-硫黄クラスターを形成する酵素ファミリーに属しており、メチル基転移酵素と協同して酵素修飾を行うことから、当該抗菌活性物質の生合成にも関連している可能性が示唆された。 分子間相互作用による作用因子同定に関しては、抗菌活性物質(リガンド)のセンサーチップへの固定化や作用因子(アナライト)導流条件の検討を行った。抗菌活性物質には窒素原子が構成原子として含まれていないため、安定的なアミンカップリング法による固定化は不可能である。そのためポリオール構造の水酸基に着目し、カルボキシル基による固定化を検討した結果、リガンド濃度を一定以下にすることで固定化出来ることを見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度7月に現職へ所属を変更したが、移籍に伴う雑事により研究に携わることが出来なかったため、第二四半期の3ヶ月間は研究停滞期間であった。 その一方で、遺伝子発現解析のデータ取得、および同データ解析が端緒についたこと、また分子間相互作用解析では条件検討が順調に進んでいることから上記判断とした。
|
今後の研究の推進方策 |
遺伝子発現解析に関してはデータを精査し、遺伝子発現増強の判断基準を制限することで、生合成関連酵素遺伝子群の同定を行う予定である。生合成経路に関しては、公的データベースで公開されているパスウェイをベースとして同遺伝子群を重ね合わせていくことで同定を進めていく予定である。 分子間相互作用解析においては、MRSA, VRE, B, subtilisの細胞破砕液を調製し、アナライトを探索使用と考えている。その際には作用因子はタンパク質である可能性が考えられるのでプロテアーゼ阻害剤を添加することでその安定性を高める。さらに作用因子が膜タンパク質であることが示唆された場合には、破砕液ではなく細胞そのものをアナライトとして試行することも考慮している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子発現解析においてデータ取得は外部委託をする計画であったが、弊学が所有する装置で遺伝子発現データを取得したため、外部委託するために計上していた予算が試薬代のみに軽減されたことに拠る。現状で解析データが不足気味であるため、次年度においても遺伝子発現データを取得するため、計上予算は予定通り消化される。
|