研究実績の概要 |
平成30年度では本研究課題対象化合物であるantiMDR(抗MRSA, 抗VRE)活性物質の特性解析に注力した。その精製過程において、Streptomyces sp. Spo05株はantiMDR活性物質を4種類生産することを明らかとし、便宜上それぞれをantiMDR-A, -B, -C, -Dと名付けた。生産量の多いantiMDR-Aは昨年までの構造解析から、員環構造と糖の複合体からなるポリオールを基本骨格としていることから、グリコシド結合を切断し、糖を切り離すことで抗菌活性が維持出来るかを検証した。塩酸及び水酸化ナトリウムによる加水分解法を採用し、切断最適条件を検討した。3段階の溶媒濃度(0.01N, 0.05N, 0.1N)と5段階の処理時間(6h, 12h, 24h, 48h, 72h)の組み合わせで検討を行い、薄層クロマトグラフィー上でその評価を行った結果、アルカリによる切断(0.05N, 48h)が構造単位でマイルドに部分分解出来ることを見出した。本化合物には複数の糖が縮合されているが、これらの糖が完全に除去されるとその抗菌活性は維持出来ないが、部分的に糖が残存していると低減されるものの抗菌活性は保持されることを見出した。このことから本化合物の特徴であるポリオール構造は縮合している糖によるもので、糖の水酸基が作用因子との結合作用に重要であることが推察された。 作用分子を同定するために分子間相互作用解析を進めているが、結合したリガンドがセンサーチップから乖離出来ないでいる。このため、ナノフローMSによる解析が行えないでいるが、より強力な(センサーチップは再利用できなくなる恐れあり)乖離法でリガンド-アナライト複合体サンプルを得る条件を検討している。
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