研究実績の概要 |
令和元年度(平成31年度)では本研究課題対象化合物であるantiMDR(抗MRSA, 抗VRE)活性物質の構造特性解析に注力した。Streptomyces sp. Spo05株はantiMDR活性物質を4種類(本課題では便宜上それぞれをantiMDR-A, -B, -C, -Dと命名)生産している。生産量、比活性供に高いantiMDR-Aは昨年度までの結果から、員環構造と糖の複合体からなるポリオールを基本骨格としていることから、グリコシド結合を切断し、部分構造解析を行うことでその全貌解明を試みた。水酸化ナトリウムによる加水分解法を採用し、切断最適条件を検討した結果、0.05N水酸化ナトリウム存在条件下で48時間反応させることにより穏やかに部分分解出来ることを見出した。このサンプルをMSn解析に供することで概ねその全体構造を推定することに成功した。 また本活性物質の作用機序を解明するためにプロテオーム解析を試みた。培養細胞を用いて本活性物質の有無によるタンパク質発現レベルでの差異を二次元泳動で見出し、当該タンパク質の同定をMSで行ったところ、その多くはUncharacterized membrane protein やIntegral membrane protein, interacts with FtsH、Leucine-rich repeats of kinetochore protein等の細胞膜構成成分に帰属することが見出された。またDNA gyrase subunit B; Validatedも候補のひとつとして挙げられている。このことより本活性物質の一次作用因子として細胞膜タンパク質が候補として考えられる。下流の作用機序(ないしはシグナル伝達)を解析するためには他のオミクス解析を用いて総合的に解釈することの必要性があるため、今後の課題とする。
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