硝酸イオン濃度変化センサータンパク質sNOOOpyは、根粒菌の持つNasSとNasTの2種類のタンパク質を用いたシステムであり、細胞内の硝酸イオン濃度変化をリアルタイムに可視化することができるシステムである。本研究は、sNOOOpyを用いた生細胞内硝酸イオン濃度の生理的変化をとらえることを目的とした研究である。本研究は大きく2つのテーマを設定しており、(テーマ1)sNOOOpyを高感度化し、細胞内の微量な硝酸イオン濃度変化を可視化することを目的として、タンパク質工学的手法を用いたsNOOOpyの改良を試み、(テーマ2)その結果を応用して生細胞内の硝酸イオン濃度変化をとらえる。三年目の研究では、主にテーマ1に取り組んだ。前年度までの研究では、sNOOOpyにどのような変異を導入するべきかを探るべく、sNOOOpyを構成するタンパク質の一つであるNasSのX線立体構造解析を試み、NasSの硝酸イオン、亜硝酸イオンの認識機構を明らかにすることができたが、今年度はNasSとNasTの複合体構造、ならびに蛍光タンパク質が付加した状態のNasS、NasTの結晶化を試みた。Akta startを導入し、タンパク質の精製効率の向上を図ったが、結晶を得ることができなかったsNOOOpyの生化学的な知見を獲得するため、様々な条件における複合体の形態を解析したところ、高濃度のタンパク質条件下では3量体以上の多量体を形成していることが分かった。これらの知見を基に、計画最終年度は、特にテーマ1に注力することとし、sNOOOpyの精製条件の再検討によるタンパク質の安定化と、その条件を用いた結晶構造解析を目指し、微結晶を得ることができたが、X線回折実験には至らなかった。
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