研究実績の概要 |
オキシトシンーオキシトシン受容体(OXT-OXTR)は向社会行動に深くかかわり自閉症スペクトラム、不安障害、うつ病、健忘症、肥満症、糖尿病等の予防、改善などの効果が報告されている。特に精神疾患を抱える患者の数は近年大幅に増加しており、OXT-OXTRが精神・神経疾患の発症メカニズムあるいは治療、予防にどのようにかかわるかを明らかにすることが極めて重要である。これまでにMeA、LS領域のOXTR発現神経細胞が社会性に重要であることを明らかにしてきた。そこでOXTR発現神経細胞が活性化すると蛍光発色するアデノ随伴ウイルスAAV- eSARE- FLEX-Tdtomatoを構築し、Oxtr-Creマウスに感染させ、向社会性行動刺激によって活性化するOXTR発現神経細胞の神経回路を可視化した。その結果、MeAからLSへ投射する回路、LSからCA2に投射する回路が向社会行動刺激時特異的に活性化することを明らかにした。オキシトシンは、バソプレシンと相反する作用をもっており、かつそれぞれの受容体とのクロストークがあり、体内半減期が短く、血液脳関門の透過効率が低いといった問題点があるため、新しいOXTRアゴニストの同定を試みた。既存のTGFαshedding assyを応用してOXTRアゴニストスクリーニングアッセイを構築し、東北大学所有の化合物ライブラリー、東京大学創薬機構所有の化合物ライブラリー、岩手大学農学部所有の天然物ライブラリーに起因する約12000種について3次スクリーニングまで行い、2種の候補化合物の濃度依存性を確認した。これらの化合物のOXTRへの結合活性をluciferase assay, カルシウムアッセイでみたところ1種の化合物が弱い結合活性が認められたものの、in vivoでの検証にはいたらなかった。
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