ポリケタイド合成酵素 (PKS) の反応において、アシル基転移酵素 (AT) はアシル基を受け渡す相手であるキャリアタンパク質 (CP) を厳密に認識していると考えられている。しかし、ATとCPの間の相互作用が弱く、ATとCPの複合体の結晶構造解析が困難なため、CP認識機構の詳細は不明であった。そこで、本研究では、クロスリンク法を利用することによりATとCPとの複合体の結晶構造解析を行った。 前年度までに、クロスリンク反応を行うためのパンテテインアミド型プローブを開発し、ジソラゾール合成酵素におけるトランス型ATとCP1 (PKSモジュール1のCPドメイン) の複合体などの結晶構造解析に成功した。これらの結果により、単独で存在するトランス型ATとCPの間に存在する相互作用を明らかにすることができた。一方で、PKSモジュール内にドメインとして存在するシス型ATとCPの相互作用の詳細については明らかになっていない。そこで、今年度はシス型ATとCPの間の相互作用について解析を行った。シス型ATとCPの組み合わせとしてビセニスタチン生合成に関わるPKSのシス型ATとCPを選定し、大腸菌における異種発現を検討したところ、それぞれ可溶性タンパク質として得ることができた。活性測定を行ったところ、アシル基を受け渡す相手として本来の組み合わせのCPを最も好むことがわかった。次に、パンテテインアミドプローブを用いたクロスリンク反応を検討したところ、クロスリンク反応が効率よく進行する条件を見出した。現在、得られたクロスリンク複合体の精製検討を行っている。
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