哺乳類を含む真核細胞の増殖において、染色体DNAの倍化のみならず細胞を構成する細胞器官やその構成分子を同様に増加させなければならない。細胞質リボソームは翻訳を担うタンパク質合成巨大複合体であり細胞増殖時に必須な翻訳亢進を支える。さらに細胞増殖時には、必要な翻訳を支えるためのリボソームの生合成を核内の主に核小体で行うことになる。このリボソームに関わる核内外での制御を知るべく、研究代表者らはヒトがん細胞を含む哺乳類細胞におけるリボソームおよびリボソーム前駆体に結合するタンパク質因子を独自に探索・解析することでその解明を進めた。これまでの探索により新規因子が同定され、それらは核小体でのリボソーム生合成および細胞質での翻訳の両方に関わることが解析の結果示唆された。その中にRNA結合タンパク質と推定される因子が複数含まれていた。これらのタンパク質の標的RNAを網羅的に同定する目的で、同定された因子(過剰発現による影響を防ぐため内在性を含めて対象とした)および標的RNAの複合体をがん細胞から単離した。この複合体から解析可能な純度および量のRNAが精製されたことから、これを次世代シーケンス解析を含むRNAシーケンス解析(RNA-seq)に供した。得られた配列情報はデータとして十分な品質を有していたことから、ヒトゲノムへのマッピング、出現頻度算出およびアノテーション解析を実施し、上記RNAタンパク質に結合する一群のmRNAを明らかにした。
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