研究課題
乾燥地の植物の中には、光反射能力を高め、過剰光による障害を回避する機構を有するものが存在する。しかし、乾燥地植物における光反射の分光的特性や生理的意義については詳細が明らかとなっていない。そこで本研究では、鳥取大学乾燥地研究センターが保有する乾燥地植物から23種類を選び、シロイヌナズナおよびソルガムを対照群として、葉表面の光反射特性と、表皮に沈着するワックス等の蓄積量と組成の解析、および電子顕微鏡による表面構造の形態観察を行った。様々な波長の光を植物葉に照射し、その反射、吸収および透過率を測定した結果、シロイヌナズナにおける光の反射率が平均16%なのに対し、乾燥地の植物は概して光の反射率が高く、最大で照射光の92%を反射する植物が見いだされた。また、いくつかの植物は短波長側の可視光をよく反射することが示された。また、表皮クチクラ層のワックス蓄積量を測定した結果、今回測定した全ての乾燥地の植物は、シロイヌナズナに比べて単位面積当たりのワックス蓄積量が多かったが、光反射率とワックス蓄積量の相関は必ずしも高くないことが示された。さらにワックス組成は、植物毎に著しく異なることが観察された。葉表面の構造を電子顕微鏡により観察したところ、光反射率の高い植物には、繊維層状構造や針状突起構造、繊維半球構造など特徴的な幾何学的構造を持つものが多く観察された。これらの結果から、乾燥地植物の葉が光の反射率を高める形質を発達させていること、さらにその高い反射率を担う要因として、ワックス蓄積量だけでなく、その組成または葉表面の幾何学構造が寄与する可能性が考えられた。
2: おおむね順調に進展している
当初目的である、植物の葉表面の光反射の光波長を測定する実験系を構築することができ、植物の光反射が、植物毎に著しく異なるという多様性に関するデータを示すことができたため。
今後は、植物の光反射に関与する遺伝的要因について、調査を行っていく予定。
本年度に計上していた遺伝子関連の予備実験を、来年度に集中して行うように研究計画を変更したため。
すべて 2018
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 82 ページ: 433-441
https://doi.org/10.1080/09168451.2018.1431516