研究課題/領域番号 |
17K07756
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
久米 一規 広島大学, 先端物質科学研究科, 助教 (80452613)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 微小管 / 酵母 / 細胞周期 / 細胞増殖 |
研究実績の概要 |
本研究では、細胞極性ネットワーク(MOR経路:進化上保存された4つ因子により形成される分子経路)による新規の微小管制御機構を明らかにし、当該制御機構と細胞増殖との関係解明を目的とする。平成29年度は、(1)MOR経路による微小管制御機構を解明するため、MOR経路変異体の微小管構造に注目し、解析を行った。さらに、(2)MOR経路と微小管系とをつなぐ因子を探索するため、これまでに取得したsup変異体(MOR経路変異体の微小管重合阻害剤(TBZ)感受性を抑圧する変異体)について、その原因遺伝子をクローニングした。また、sup変異体の微小管構造について、解析を行った。 (1)MOR経路変異体の微小管構造を観察したところ(チューブリンにGFPを連結した株を使用)、細胞周期間期に形成される細胞質微小管の本数が、野生株と比較して、顕著に増加していた。さらに、MOR経路変異体では、分裂期において、核内スピンドル微小管と細胞質微小管が共存する異常な分裂期細胞が観察された(野生株では観察されない)。また、その異常な分裂期細胞では、スピンドル微小管の蛍光強度が、正常な分裂期細胞と比較して低下していた。以上の結果から、MOR経路は、細胞周期に依存した微小管の構成、および再構成に重要であることが示唆された。 (2)取得したsup変異体(6遺伝子座に分類)のうち、未同定の4つのsup変異体について、原因遺伝子のクローニングを行った。その結果、3つのsup変異体について、原因遺伝子の候補遺伝子を含むプラスミドの単離に成功した。また、sup変異体の微小管構造を観察したところ、3つのsup変異体において、細胞周期間期の細胞質微小管の本数が野生株と比較して、減少していた。これらの原因遺伝子は、細胞質微小管の形成に関わることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MOR経路による新規の微小管制御機構を解明するため、平成29年度は、MOR経路変異体の微小管構造についての解析を進め、MOR経路が、細胞周期に依存した微小管形成に関わることがわかった。さらに、MOR経路と微小管系とをつなぐ因子を同定するため、これまでに取得したsup変異体の原因遺伝子のクローニングを進め、候補となる遺伝子を含むプラスミドの単離に成功した。また、sup変異体の微小管構造についても解析を進め、sup変異体の中には、細胞質微小管の形成に異常を示すものが含まれており、微小管制御においてMOR経路と機能関連する因子であることが示唆された。以上の進捗状況から、本研究課題は、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、sup遺伝子の同定、sup変異体の解析を進める。さらに、MOR経路による微小管制御機構において、MOR経路のターゲットとなる因子を既知の微小管関連因子の中から探索する。特定した当該因子について、MOR経路による当該因子の制御機構を分子レベルで明らかにする。また、当該因子とMOR経路、sup遺伝子との関係を調べ、微小管制御における全体像を明らかにするとともに、当該制御機構と細胞増殖との関係についての解析も行う。
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