研究課題
本研究では、研究代表者がこれまでに明らかにした進化上保存された分子経路である細胞極性形成ネットワーク(MOR経路)について、その新規機能(MOR経路による微小管制御)の分子機構の解明を目指した。MOR経路の下流で微小管制御に関わるMOR経路のターゲット分子を明らかにするために、昨年度選抜したMOR経路変異体が示す微小管構造の異常(細胞質微小管の増加)に関わる微小管関連因子に注目して解析を行った。選抜した因子について、野生株とMOR経路変異体での細胞内局在を調べたところ、MOR経路変異により局在量が増加する因子が複数存在することがわかった。つまりMOR経路変異による細胞質微小管の増加は、局在量が増加した微小管関連因子により引き起こされることが示唆された。次に選抜した微小管関連因子が、MOR経路の最下流で機能するタンパク質リン酸化酵素・Orb6によりリン酸化される可能性を検証した。Phos-tagウエスタン解析を行った結果、微小管のマイナス端に局在し、微小管形成に重要な2つ微小管関連因子がOrb6によりリン酸化される可能性が示唆された。Orb6がこれらの因子を直接リン酸化することを確認するために、大腸菌を用いて精製できた1つの微小管関連因子について、in vitroキナーゼアッセイを行った。その結果、直接リン酸化することを確認した。さらにリン酸化プロテミクスによりOrb6がリン酸化するサイトを探索したところ、5つのサイトを同定した。当該サイトの非リン酸化型変異体を構築し、微小管構造を観察した結果、MOR経路変異体と同様、細胞質微小管が増加した。以上より、Orb6が微小管関連因子をリン酸化することにより細胞質微小管の本数を適切に制御するというモデルが示唆された。またMOR経路による微小管制御が分裂期の正常な染色体分配遂行のために必要なスピンドル形成に重要であることがわかった。
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 84 ページ: 869~875
doi.org/10.1080/09168451.2020.1717926