研究実績の概要 |
2018年度に引き続き,exon 11をloxPで挟んだ遺伝子座を持つGDE5 floxマウスの作出を行なった.guide RNA を改良し,PITCh法を用いることでexon 11領域の両端にloxP配列を有するマウスを繁殖させ,肝実質細胞でCreリコンビナーゼを発現するAlbumin Cre (B6.Cg-Tg(Alb-cre)21Mgn/J)マウスと交配を行うことでAlb cre+/-, GDE5 flox/floxマウスを取得した.以前にGDE5全身ホモ欠損マウスはコリン代謝の異常を伴う胎生致死を示したが,Alb cre+/-, GDE5 flox/floxマウス(肝臓特異的GDE5欠損マウス)は致死とはならず,発育が認められた.肝臓特異的GDE5欠損マウス,および同腹の野生型マウス(Alb cre-/-, GDE5 flox/flox)を用いて,正常食を用いて飼育を行い、肝臓内コリン代謝物濃度などをLCMS法によって解析を行った.その結果,肝臓内のGPCの有意な上昇が認られ,メチル基供給を担うベタイン量の低下,さらにメチル化能の指標となるS-アデノシルホモシステイン(SAH)に対するS-アデノシルメチオニン(SAM)の比率が有意に低下していることも確認された.また肝臓における遺伝子発現を解析したところ,野生型マウスと比較して肝臓特異的GDE5欠損マウスにおいて、methionine adenosyltransferase 1A、およびbetaine-homocysteine S-methyltransferaseの遺伝子発現が有意に増加しており,肝臓におけるGDE5の欠損はone-carbon metabolismの代謝変動を引き起こし、細胞内のメチル化反応に影響を及ぼすことが示された.
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