研究課題
花による発熱現象は、裸子植物から被子植物まで約80種の植物で報告がある。その中で、裸子植物は過半数を占めるが、植物の発熱研究は、これまで被子植物が中心であった。日本に自生する裸子植物ソテツ(Cycas revoluta)も、その発熱諸性質は十分に検証されていなかったが、最近申請者らは、本植物の花は、光に依存して体温を変化させ、被子植物の発熱に役割を持つシアン耐性呼吸酵素(AOX)が、一部の組織で活発に働くことを明らかとした。AOXはミトコンドリア内膜の内側に埋め込まれた膜蛋白質であり、ソテツの花は発達した葉緑体を持たないため、光が花の発熱を誘導する機構には興味が持たれた。そこで本研究では、植物による光シグナル伝達と熱産生をつなぐ新規機構の解明を目指して、C. revolutaの光依存的な発熱分子機構を明らかとすることを目的としている。本研究では、ソテツの花の発熱関連遺伝子と推定されている複数遺伝子について、光照射後と消灯後に、経時的に雄花および雌花の主要組織のサンプリングを行い、当該組織を対象としたリアルタイムPCRによる発現解析を行った。その結果、解析した遺伝子の中で、発熱組織特異的な発現が観られ、かつ光依存的な発現応答を示す遺伝子は見出せなかったが、新学術領域研究「先端ゲノム支援」の採択課題に選定され、RNA-seq解析研究を推進できたことにより、リアルタイムPCRのインターナルコントロールを探すことができた。なお、本科研費の成果を含む論文が、著名な植物科学雑誌であるPlant Physiology誌に掲載され、一連の研究により、ソテツの花が発熱するしくみの理解を飛躍的に進展させることができた。今後、花の発熱を支えるしくみの理解が進めば、寒冷環境下における農作物の成長を促進したり、花における匂い成分の合成や飛散を促進する技術の開発につながることが期待される。
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Scientific Reports
巻: 10 ページ: Article No.2353
https://doi.org/10.1038/s41598-020-59190-1
Plant Physiology
巻: 180 ページ: 743-756
https://doi.org/10.1104/pp.19.00150
https://www.itoinaba.com/