研究課題
生体内で働くタンパク質の中には、特定のチロシン残基が硫酸化修飾を受けることで、機能が制御されているものがある。この修飾は、抗原抗体反応、補体カスケード、HIVを含むウイルスの感染等、様々な生命現象への関わりが報告されている。硫酸化修飾を担っているのは、タンパク質チロシン硫酸転移酵素(TPST)である。平成29年度は、結晶構造解析に成功したヒトhTPST1の論文作成と国際誌への投稿を行った。その結果、Scientific Reports, (2017)に掲載された。hTPST1は、可溶性タンパク質として大量発現させ、その後、反応後生成物である3’,5’-Phosphoadenosine phosphate (PAP)と基質となる補体C4タンパク質からデザインした11残基のペプチドとの共存下で結晶化した。このhTPST1は、hTPST2と同様に、二量体を形成し、その二量体の間につくられる奥深い溝の部分でターゲットとなるタンパク質のチロシン残基部分を結合して、その部分で特異的に硫酸基をつけていることが判明した。また、真核生物の生体内での硫酸化には、唯一の硫酸供与体である活性硫酸PAPSが必須である。これらのPAPS合成酵素遺伝子は2種類存在する。硫酸化の生理機能を解明するために、ゼブラフィッシュをモデルとした活性硫酸合成酵素(PAPSS)のクローニング・諸性質の検討を行った。その結果、生理的pH条件下において、zfPAPSS1はzfPAPSS2よりもATPに対する親和性が高く最大反応速度が遅く、温度安定性が低いことが明らかとなった。さらに、ゼブラフィッシュを用いて遺伝子ノックダウン及び2D-DIGEによるPAPSSアイソフォームの生理機能解明を試みた。その結果、PAPSSアイソフォーム遺伝子ごとにそれぞれ差異のある表現型及びタンパク質発現が観察された。
2: おおむね順調に進展している
結晶構造解析に成功したヒトhTPST1の論文作成と国際誌への投稿を行った。その結果、Scientific Reports, (2017)に掲載されたことから。また、真核生物の生体内での硫酸化には、硫酸供与体である活性硫酸PAPSが必須である。硫酸化の生理機能を解明するために、ゼブラフィッシュをモデルとした活性硫酸合成酵素(PAPSS)のクローニング・諸性質の検討行った。その結果、生理的pH条件下において、zfPAPSS1はzfPAPSS2よりもATPに対する親和性が高く最大反応速度が遅く、温度安定性が低いことを明らかにしたことから。
予備実験として、ゼブラフィッシュをモデルとしたTPST遺伝子ノックダウンによる生理機能解析から、TPSTは、胚発生に重要な影響を与えている。また、活性硫酸PAPS合成遺伝子をノックダウンした場合、表現型の異常が顕著に見られた。これらのことから、ノックダウン個体のプロテオーム解析を行うことで、高発現または低発現タンパク質を特定し、硫酸化に係わるタンパク質や代謝制御のメカニズムを明らかにする。
物品の購入において、より安い価格のものを選択したため。次年度使用額は、平成30年度の物品購入費として使用の予定。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 10件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 10件) 学会発表 (8件)
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