研究課題
生体内で働くタンパク質の中には、特定のチロシン残基が硫酸化修飾を受けることで、機能が制御されているものがある。この修飾は、抗原抗体反応、補体カスケード、HIVを含むウイルスの感染等、様々な生命現象への関わりが報告されている。硫酸化修飾を担っているのは、タンパク質チロシン硫酸転移酵素(TPST)である。ゼブラフィッシュをモデルとしたTPST遺伝子ノックダウンによる生理機能解析から、TPSTは、胚発生に重要な影響を与えている。また、予備実験として硫酸化に必須な活性硫酸PAPS合成遺伝子(PAPSS)をノックダウンした場合、表現型の異常が顕著に見られた。そこで平成30年度は、翻訳後修飾としてのチロシン硫酸化と低分子生体内生理活性物質の硫酸化の機能性解明のため、3種類あるPAPS合成遺伝子をノックダウンした場合の、胚発生に及ぼす影響を詳細に検討した。手法はアンチセンスオリゴを1~2細胞期の受精卵にインジェクションして、インジェクション後27時間および51時間後のゼブラフィッシュの表現型を観察した。その結果、27時間後のゼブラフィッシュの表現型は、PAPSS1/2/3いずれも背骨の屈曲が顕著に現れた。このことは、ヒトのPAPSS2欠損時の臨床症状と類似していた。また、51時間後もPAPSS1/2/3いずれも背骨の屈曲が顕著に現れた。これもヒトのPAPSS2欠損時の臨床症状と類似していた。これらのことから、軟骨組織におけるPAPSSアイソフォーム間の発現量の違いに影響していることが考えられ、表現型が酷似していることからPAPSS1,2,3の生理機能はオーバーラップしている可能性が示唆された。また、ノックダウンした胚を35S同位体で代謝ラベルした後、SDS-PAGEにて硫酸化タンパク質を解析した結果、対照区に比べて異なるスポットをいくつか確認した。
2: おおむね順調に進展している
3種類あるPAPS合成遺伝子をノックダウンした場合の、胚発生に及ぼす影響を詳細に検討し、27時間後および51時間後のゼブラフィッシュの表現型が、PAPSS1/2/3いずれも背骨の屈曲が顕著に現れることを明らかにしたことから。また、表現型が酷似していることからPAPSS1,2,3の生理機能はオーバーラップしている可能性を明らかにしたことも理由として挙げられる。
活性硫酸PAPS合成遺伝子をノックダウンした場合、表現型の異常が顕著に見られたことから3種類のPAPSS遺伝子のノックダウン個体のプロテオーム解析を行い、有意に異なる挙動を示すタンパク質を特定する。なお、手法は、蛍光ディファレンシャル二次元電気泳動(2D-DIGE)による多重比較解析を行い、発現挙動の異なるタンパク質を質量解析して同定する。
学会出張を予定していたが、大学の重要会議と重なり、学会出張を取りやめたため。次年度使用額は、令和元年度の旅費として使用の予定。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (9件)
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