研究課題
チロシン硫酸化は翻訳後修飾の1つであり、分泌タンパク質、膜タンパク質のチロシン残基に硫酸基を転移させる反応である。炎症、止血、免疫などの生理機能に関与することが明らかになっており、近年では HIVがCCR5などの特定のチロシン硫酸化タンパク質を認識して感染していることが判明し注目されている。この反応はチロシン硫酸転移酵素(TPST)によって触媒されるが、標的タンパク質と生理機能は未だ解明されていない部分も多い。今までのゼブラフィッシュをモデルとしたTPST遺伝子ノックダウンによる生理機能解析から、TPSTは、胚発生に重要な影響を与えていることが分かっている。また、硫酸化に必須な活性硫酸PAPS合成遺伝子(PAPSS)をノックダウンした場合、表現型の異常が顕著に見られた。そこで、平成31年度(令和元年度)は、多くのタンパク質がチロシン硫酸化されているヒト肝癌由来細胞株HepG2を用いて、siRNAを導入しTPST-1および2 のノックダウン細胞を作成した。それらのサンプルを用いて蛍光ディファレンシャル二次元電気泳動を行い、発現量変動タンパク質をMALDI-TOF MSで同定し、チロシン硫酸化の生理機能解析と新たな標的タンパク質の発見を目指した。その結果、HepG2に適したsiRNA処理条件を決定することが出来、TPST-1、2それぞれ高効率でノックダウンするsiRNAを選抜し、mRNA、タンパク質レベルでの発現量減少を確認することが出来た。また、TPSTノックダウン細胞では20%程度のペプチド硫酸化活性の低下が確認された。さらに、TPST-1、2の ノックダウンにおいてペルオキシレドキシンやHsp70などのストレス応答分子を中心に発現変動が確認された。 以上の結果から、チロシン硫酸化阻害が細胞内ストレス応答に影響を引き起こした可能性があり、今後はその機能解明を行いたい。
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