研究課題/領域番号 |
17K07770
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
森 直樹 京都大学, 農学研究科, 教授 (30293913)
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研究分担者 |
寺石 政義 京都大学, 農学研究科, 講師 (80378819)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | bets-tyrosine / 非天然アミノ酸 / イネ / アレロパシー活性 |
研究実績の概要 |
本研究は、「イネ(日本晴)が生産するベーター-アミノ酸の生理的・生態学的機構の解明」を目的として、平成29年から4年間で計画されている。本研究の基盤は、①イネ (日本晴) はtyrosine aminomutase 1 (TAM1) により L-tyrosine から (R)-β-tyrosine を生合成すること、②その(R)-β-tyrosine はシロイヌナズナを含めた数種の双子葉植物の根の伸長を阻害する一方、イネやトウモロコシなどの単子葉植物には活性を示さないことを世界で最初に示した我々の研究にあり、(R)-β-tyrosineが示す双子葉に特異的な根伸長阻害活性の機構解明を目指している。 令和元年度は、平成29年度の確立した生物試験法をもとにして、β-tyrosineで処理したイネ根におけるphenylalanine ammonia-lyase(PAL)活性、peroxidase(POD)活性そしてリグニンの量を調べた。 その結果、β-tyrosine処理によりPAL活性、POD活性が上昇する一方、リグニン量が減少した。特に、リグニン量の減少と根の長さの対数値が有意に相関し、リグニン量の減少に伴い根の伸長が阻害された。 また、平成30年度の成果では、β-tyrosineによるシロイヌナズナの根の伸長阻害活性は天然の(S)-α-tyrosineの添加により緩和されることを示したが、(R)-体の添加では緩和されなかった。 以上の結果はβ-tyrosineの作用機作解明につながる結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度、30年度に行った詳細な検討から、(R)-β-tyrosineが双子葉植物に特異的に根の伸長抑制を示す理由として、双子葉植物に特異的な一次細胞壁の塩基性タンパク質(エクステンシン)の架橋に関与するtyrosine dimerに注目した。 令和元年度には、さらにβ-tyrosine処理によりPAL活性、POD活性が上昇する一方、リグニン量が減少することを確認した。 さらに、β-tyrosineの簡便な合成方法も確立した。令和2年度には放射性同位体β-tyrosineを合成して試験系に用いることで、オートラジオグラムによるβ-tyrosineの局在を検討する。 以上の結果は、β-tyrosineの作用機作解明につながる結果である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度、30年度の成果から、(R)-β-tyrosineが双子葉植物に特異的に根の伸長抑制を示す理由として、双子葉植物に特異的な一次細胞壁のtyrosine dimerに注目した。植物の細胞壁は一次細胞壁と二次細胞壁に分類され、前者は植物の生育を制御しており、単子葉と双子葉植物でその構造が異なる。単子葉植物では糖鎖で構成されるのに対し、双子葉植物では糖鎖と塩基性タンパク質(エクステンシン)で構成される。このエクステンシンの架橋にtyrosine dimerが関与している。 今後は、令和元年に得られた(R)-β-tyrosine処理による①PAL活性、②POD活性の上昇、③リグニン量の減少とtyrosine dimerの架橋に及ぼす影響に注目して、根の伸長抑制機構の解明に臨む。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度では順調に研究が推移したので、想定していた薬品類の使用が少なかった。令和2年度は配分額が減る予定なので、次年度と併せて有意義に使用する。
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