研究課題/領域番号 |
17K07772
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
清田 洋正 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (30234397)
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研究分担者 |
泉 実 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (90379719)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 全合成 / 天然物 / モモ / マオエクリスタルV / サンクトリドA / テレパミド / コルチスタチンA |
研究実績の概要 |
1. 新規骨格・活性化合物の探索(植物): バラ科モモ属樹木からは黄桃や白桃が栽培果実として利用されている。一方、これら栽培種の元と考えられるモモ原種の実には古来より薬効があると伝わる。そこで、岡山県内の栽培種や野生モモの実や花を探索、採集して含有成分の解析を行った。栽培種の葉からはsqualene、kaurene、isophytol、beyereneなどのテルペン系炭化水素及び誘導体が見つかった。一方野生種の花の香りの主成分はmethyl eugenolおよびbenzaldehydeであった。その他成分について構造解析を進めている。 2. 新規骨格・活性化合物の合成研究: 抗腫瘍性を示す植物成分maoecrystal Vについて、大量合成研究を進めるとともに、橋状環-ラクトン環部骨格のモデル合成に成功した。導入するC1単位にジチアンを用いて、酸化的脱保護と同時に分子内ヘミアセタール環化を生じさせるものであり、全合成に応用可能である。海洋環形動物の生産する新規ポリケチド=アミノ酸=スルフィドthelepamideアミノ酸部位のモデルについて、新規な(酸触媒を用いて分子間N,O-アセタールを形成する主)手法による合成に成功した。藍藻の生産するsanctolide Aについて、側鎖部分の不斉合成を行った。また、マクロ環を含むモデル化合物11,12,13-trinor-7-demethoxy体の新規合成法に関する検討を行った。CortistatinAのアルキンメタセシス前駆体の合成を行った。同じく新規なアナログの合成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 新規骨格・活性化合物の探索(植物): 天然資源からの新規化合物の単離は順調に進んでいる。中国研究協力者の事情により探索が制限されていたため、国内資源の活用にシフトした。 2. 新規骨格・活性化合物の合成研究: Maoecrystal Vについては、中間体の供給に加えて、鍵となるラクトン環部のモデル構築に成功した。Enacyloxin類については、従来開発した経路に従って中間体の大量合成を進めている。Thelepamideについては、天然物に類例の無いオキサゾリジノン環の新規な構築条件(酸触媒分子間N,O-アセタール環化)を見出すことができた。全合成に適用可能である。Sanctolideについては、モデル化合物11,12,13-trinor-7-demethoxy体の新規骨格構築法の検討と側鎖不斉合成を進めており、順調である。CortistatinA類:全合成鍵中間体と新規アナログの合成を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
1. 新規骨格・活性化合物の探索(植物): 中国の天然資源については、入試でき次第探索を進める。日本国栽培モモおよび野生モモからの新規物質の単離と生物活性評価については、これまで通り進める予定である。 2. 新規骨格・活性化合物の合成研究: Maoecrystal V:鍵となるエーテル環構築の再現性を確認し、ラクトン環形成を試みる。Enacyloxin類:全合成研究を進める。Thelepamide:得意なオキサゾリジノン環部分の誘導体を各種合成し、構造活性相関研究を行う。Sanctolide:全合成研究を行う。モデル類縁体の合成により、構造活性相関を明らかにする。Clionamine類:合成に必要なジケテンが入手不要になったため、代替手段によるラクトン部合成を試みる。Cortistatin類:アルキンメタセシスによる全合成を試みる。Greensporone類:Takaiカップリングを用いた全合成研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費・日当計算の関係により余剰金が生じた。来年度、旅費・消耗品費として使用予定である。
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