研究課題
希少糖D-アラビノース (D-Ara) は,線虫Cenorhabditis elegansの成長を強く阻害する。しかし,その作用メカニズムは明らかではなかった。線虫体内に取込まれたD-Araはリン酸化されD-アラビノース5-リン酸(D-Ara-5P)となり,それが糖代謝酵素を阻害し,その結果,成長阻害を示すと推測した。D-Ara成長阻害活性は,線虫培地へのD-フルクトース (D-Fru),あるいはD-リボース(D-Rib) 添加で打ち消されることから,その阻害活性はD-FruとD-Rib代謝に関連することが予想された。そこで,D-Ara-5Pの標的酵素として解糖系のグルコースリン酸イソメラーゼ(GPI)およびペントースリン酸経路のリボースリン酸イソメラーゼ(RPI)に注目し,それぞれについて酵素阻害実験を行なった。粗酵素溶液としてC. elegans成虫のホモジネートを使用した。①GPI阻害実験:基質D-Fru-6P,阻害剤D-Ara-5Pと粗酵素をTris-HCl緩衝液中で反応させた。生成したD-Glc-6Pを酵素的定量法で分析し,反応を解析した。その結果,D-Ara-5PはGPIを弱く阻害することが判明した。②RPI阻害実験:基質D-Rib-5P,阻害剤D-Ara-5Pと粗酵素をTris-HCl緩衝液中で反応させた。生成したD-リブロース 5-リン酸をプレカラム蛍光標識HPLC法により定量分析し,反応を解析した。その結果,D-Ara-5PはRPIを顕著に阻害することが明らかになった。D-AraにはGPI, RPI阻害活性はなかった。D-Araによる成長阻害は,D-Ara-5PがGPIとRPIを阻害することでエネルギー産生とD-Rib(核酸)合成を抑制することにより起きる可能性が示された。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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