研究課題/領域番号 |
17K07775
|
研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
尾崎 紀昭 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (50468120)
|
研究分担者 |
常盤野 哲生 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (50312343)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | イネ / シリカ / バイオミネラリゼーション / プロテオーム / ケイ酸 |
研究実績の概要 |
イネはバイオミネラリゼーションによって地上部(葉身、籾殻)重量の10%にも及ぶシリカを沈積する。本研究では、イネ葉身および籾殻に形成されるシリカ(ケイ酸体)にタンパク質が含まれることを世界に先駆けて発見した。今回発見したタンパク質が他のシリカ形成生物(珪藻、海綿、ある種の細菌)と同様にシリカ形成を制御しているのか検証することが最終目標である。 2017年度に引き続き、2018年度は以下に示す成果を得た。 1)あきたこまち、秋田酒こまちの各葉身由来シリカから得たフッ化水素溶液可溶性画分(以降HF可溶性区)中に存在する11 kDaタンパク質をLC-MS/MSにて再解析した結果、両タンパク質の配列はアミノ酸レベルで完全に一致するという結果が得られた。 2)籾殻のプロテーム解析を行った結果、前年度までに得られた籾殻クチクラタンパク質の他に、新たに籾殻シリカ由来HF可溶性区に単一の高分子タンパク質(120 kDa)が存在することが分かった。このタンパク質を効率よく可溶化する手法を確立し、120 kDaタンパク質の分子質量測定およびLC-MS/MS解析を行った。得られた配列情報を基にデータベースとの比較を行った結果、本タンパク質は既知の糖分解酵素様ドメインを有し、その分子質量から推察すると新奇のタンパク質である可能性が示された。 3)上記で得られたイネ葉身シリカタンパク質および籾殻シリカタンパク質のケイ酸重合活性試験を行った。既にケイ酸重合活性を示すことが報告されている海綿シリカ由来のタンパク質Glassinとの比較を行った結果、籾殻シリカタンパク質に一定の活性が検出された。 4)シリカ形成時期に高発現する遺伝子の特定を目的として、7月~9月にかけて経時的に各試料(葉身、籾)を採集・調製した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定よりもイネ葉身のシリカに含まれるタンパク質のキャラクタリゼーション(特に遺伝子の発現解析等)がやや遅れ気味であることは否めないが、籾殻および籾殻シリカに関するプロテオー解析が当初の計画よりも大幅に進展した。両者を総合した結果、おおむね順調と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度前半において、英国・エディンバラ大学化学部Fabio Nudelman博士のもとでサバティカル研修(留学)を行うため、現地で実施する研究内容としてクライオ電子顕微鏡を用いたイネ・シリカの微細構造解析へと一部、方向転換する。現地ではクライオ透過型電子顕微鏡およびクライオ走査型電子顕微鏡を利用可能であることから、これらの機器を使用して、シリカ内におけるタンパク質の局在解析および三次元画像の構築を試みる。帰国後の2019年度後半に関しては、前年度までに得られたタンパク質および遺伝子の情報を基に、イネのバイオミネラリゼーションにおいて、特定のタンパク質が関与するかどうかを総合的に検証する。
|