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2017 年度 実施状況報告書

穏和な酸化およびラジカルカップリングに基づく新規な環境調和型の複素環合成法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 17K07776
研究機関大阪府立大学

研究代表者

谷森 紳治  大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (50207198)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード複素環化合物 / オキサゾール / キノキサリン / インドール / オカラミン / メタルフリー / 環境調和型合成 / 化合物ライブラリー
研究実績の概要

医薬品や農薬、生理活性物質、有機電子材料、機能性色素などとして有用性の高い、環内に窒素原子を含んだ含窒素複素環化合物を対象に、環境調和性と持続性を考慮した新規合成法の開発を行う。具体的には、遷移金属触媒や、強酸や強塩基などを用いるのではなく、ヨウ素やアミノ酸、アルカリ金属など資源的に豊富かつ再生可能であり、有害性の少ない安全性の高い反応剤に用い、温和な条件下で進行する合成法を開発する。
有用な化合物の環境調和性の高い合成法が開発できれば合成コストの低下につながる。これは、医農薬等の低価格供給にもつながり、途上国等で問題となっている有毒で残留性があり、使用が禁止となっている農薬の違法使用の回避、薬価が高く十分に医薬品が行き渡らない貧困地域における、マラリア、エイズ等の感染症の撲滅に貢献できる。さらに穏和な条件下、低毒性で安全性の高い反応剤を用いる反応が開発できれば、物質生産現場における安全性の向上にもつながり、女性の当該分野における社会進出等にも貢献できるものと考えている。また、再生可能な資源の有効利用は、限られた資源の保護とともに、物質生産を通した人類の永続的繁栄にも寄与するものである。
29年度は、オキサゾール合成法の基質適用限界の探究、ワンポット合成、医薬品合成の応用並びに、キノキサリン、インドール合成法の検討を開始する。30年度は、オキサゾール合成法のチアゾール、イミダゾールへの展開、ライブラリー構築と生理活性評価、キノキサリン、インドール合成法の基質展開並びに合成法の応用、ヒドラジン、フタラジンのアリール化の検討を行う。31年度は、ヒドラジン、フタラジン合成法の基質展開、応用研究、各反応の反応機構を調べるためのコントロール実験、合成された誘導体の生理活性評価、オカラミンの全合成研究を行うとともに、次世代型環境調和合成法の探索を開始する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画に基づき、オキサゾール合成法の基質適用限界の探究、ワンポット合成、医薬品合成の応用並びに、キノキサリン、インドール合成法の検討を開始した。
まずオキサゾール合成法の基質適用限界に関して、2位の置換基については、芳香環(2-メチル、2-メトキシ、2-ブロモ、3-シアノ、4-ニトロフェニル基、3-ピリジル基)ならびにアルキル基(メチル、トリフルオロメチル、n-ペンチル、シクロヘキシル、t-ブチル、)について、不安定なシアノ基、強い電子求引性基であるニトロ基、更には立体障害の大きいt-ブチル基についても許容性があることがわかった。5位の置換基は、アシル基、エステル基で可能である。
ワンポット化については、ベンズアミドとアセチルアセトンを酸触媒下で縮合させエナミドを得た後、溶媒の留去、最適条件の適用により達成した(63%)。
医薬品合成への応用は、抗がん活性物質の合成中間体を標的とした。(2-フルオロベンゾイル)酢酸エチルと酢酸アンモニウムを反応させてエナミンとした後、塩化アセチルにより環化前駆体を得た。環化反応は良好に進行し、84%の収率で目的体を獲た。以上の結果は、論文発表を行った(Tanimori, S. et al. Tetrahedron 2017, 73, 1247.)。
2-ハロアニリンとアミノ酸のアミド縮合体の環化によるキノキサリン合成は、再考の末、従来のワンポット合成法に関してpriorityが見出せなかったことから検討しないことにした。代替反応として、2-ブロモチオシソシアネートとマロン酸エステル並びにシアノ酢酸エステル付加体の環化を検討した。その結果、Pd触媒を用いることにより目的の環化体が低収率(26ならびに40%)得られる新たな合成法を見出した。
予定したエナミン体の環化によるインドール合成は、種々条件検討を行ったが、反応は進行しなかった。

今後の研究の推進方策

オキサゾールに関しては、当初の計画通り、チアゾ-ル並びにイミダゾールへの展開を試みる。更に、ヨウ素源であるPIFAを少過剰必要とする問題点があるため、その触媒化を試みる。また、環化前駆体のエナミドならびにオキサゾールに関して、基質の許容性を検討する中で一連の化合物ライブラリーが構築出来たので、それらの生理活性を調べる。
キノキサリンに関しては、断念しており、代替反応として成功した2-ブロモチオシソシアネートとマロン酸エステル並びにシアノ酢酸エステル付加体の環化反応に対して、現在収率が中程度であるためその向上を検討する。更に他の求核剤(炭素ならびに硫黄、酸素求核剤)での検討も行う。
インドールに関しては、当初計画したエナミン体のメタルフリー条件下での環化は進行しなかったが、従来当研究室で開発した銅触媒を用いる別法(Tanimori, S. et al. Eur. J. Org. Chem. 2007, 3977-3980.)などを利用し、天然殺虫剤として注目されるオカラミンBのABC環部の構築ならびに、4員環部分の構築を試みる。
また、当初計画していた、分子間N-アリール化反応による置換ヒドラジン並びにフタラジン誘導体の合成を検討開始する。

次年度使用額が生じた理由

設備備品としてパーソナル有機合成装置を導入予定であったが、消耗品の支出が予想外に多かったことから次年度により安価な連続反応器(フローリアクター)で代替することにした。効果としてはパーソナル有機合成装置と同等であり、研究計画の遂行には支障がないと考えている。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] A rapid access to substituted oxazoles via PIFA-mediated oxidative cyclization of enamides2017

    • 著者名/発表者名
      Midori Kamiya, Motohiro Sonoda, Shinji Tanimori
    • 雑誌名

      Tetrahedron

      巻: 73 ページ: 1247-1254

    • DOI

      10.1016/j.tet.2017.01.027

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Sequential Synthesis, Olfactory Properties, and Biological Activity of Quinoxaline Derivatives2017

    • 著者名/発表者名
      Imanishi Mia、Sonoda Motohiro、Miyazato Hironari、Sugimoto Keiichiro、Akagawa Mitsugu、Tanimori Shinji
    • 雑誌名

      ACS Omega

      巻: 2 ページ: 1875~1885

    • DOI

      10.1021/acsomega.7b00124

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Bacillus cereus が産生する環状ドデカデプシペプチド, ホモセレウリドの合成と生物活性の検討2018

    • 著者名/発表者名
      奈賀俊人, 服部能英, 竹中宏誌, 大田洋一郎, 切畑光統, 谷森紳治
    • 学会等名
      日本農芸化学会2018年度(平成30年度)大会[名古屋]
  • [学会発表] プロリン触媒下塩基によるインダゾロンの簡便合成2018

    • 著者名/発表者名
      谷森紳治,辻井美穂,園田素啓
    • 学会等名
      日本農芸化学会2018年度(平成30年度)大会[名古屋]
  • [学会発表] β-Carboline 誘導体の簡便な合成法の開発2018

    • 著者名/発表者名
      三好康平,園田素啓,谷森紳治
    • 学会等名
      日本農芸化学会2018年度(平成30年度)大会[名古屋]
  • [学会発表] オキソン存在下ヨードベンゼンを触媒に用いた1H-インダゾールの合成2017

    • 著者名/発表者名
      柏 充裕・園田素啓・谷森紳治
    • 学会等名
      第47回複素環化学討論会
  • [学会発表] プロリンを触媒に用いた塩基存在下ビアリールおよびインダゾロンの合成2017

    • 著者名/発表者名
      上野 穣,辻井美穂,園田素啓,谷森紳治
    • 学会等名
      第112回有機合成シンポジウム
  • [学会発表] ライブラリー構築を目的としたキノキサリノン誘導体の合成2017

    • 著者名/発表者名
      杤尾紗央、園田素啓、谷森紳治
    • 学会等名
      第32回農薬デザイン研究会
  • [産業財産権] イソサミジン類縁体およびサミジン類縁体の製造方法2017

    • 発明者名
      木下麻美、園田素啓、谷森紳治
    • 権利者名
      木下麻美、園田素啓、谷森紳治
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2017-039701

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公開日: 2018-12-17  

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