研究課題/領域番号 |
17K07778
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
塩見 和朗 北里大学, 感染制御科学府, 教授 (40235502)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 薬剤耐性酵素阻害物質 / アルベカシン耐性 / 微生物代謝産物 / 薬剤耐性克服物質 / アミノグリコシド耐性 / 抗生物質 / アルベカシン修飾酵素 / 二機能酵素 |
研究実績の概要 |
2018年度は、糸状菌FKJ-0069株培養物より活性物質として同定されたcitrininについての活性評価を検証した。Citrininは1 μg/discの条件でアルベカシン含有検定プレートにおいて選択的に阻止円を形成した。しかしアルベカシンを不活性化する二機能酵素アッセイでは、アセチル化もリン酸化も阻害しなかった。したがって他の阻害活性メカニズムにより、アルベカシン耐性克服活性が示されていると考えられた。また、海洋土壌由来放線菌のKMA-0091、KMA-0092、KMA-0105の培養物にアルベカシン耐性克服活性が確認されたので、アルベカシン耐性克服活性物質の取得を試みた。その結果、KMA-0091、KMA-0092、KMA-0105のいずれの培養物においても、活性物質が精製途中で消失し単離には至らなかった。さらに昨年度同様に、連携研究者により調製・供給された約2,000検体の微生物培養液サンプルを用いてスクリーニングを行った。すなわち、薬剤耐性機構がない黄色ブドウ球菌RN4220にpND50(E. coli-S. aureus shuttle cloning vector)を用いてプロモーター領域を含むaac(6′)-Ie/aph(2″)-Iaを形質転換し、二機能酵素発現株を樹立した形質転換体およびRN4220にpND50ベクターのみを形質転換した形質転換体を検定菌として、アルベカシン耐性克服活性を有する微生物培養液を選択した。その結果、土壌由来糸状菌2株(FKI-8026, FKI-8147)の培養物ならびに海洋由来糸状菌1株(FKJ-0154)の培養物にアルベカシン耐性克服活性が確認された。それら培養物の活性物質を精製、単離した結果、それぞれsclerotiorin、sclerotioramine、tanzawaic acid類と同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度もさらにスクリーニングを行い、アルベカシン耐性克服活性を示す培養液からの活性物質を精製していく計画を実施した。さらに、連携研究者により調製・供給された約2,000検体の微生物培養液サンプルを用いてスクリーニングを行った。これまでにおよそ4,000検体の微生物培養液サンプルを用いてスクリーニングを行い、アルベカシン耐性克服活性を示した8検体の培養液を選択した。海洋土壌由来糸状菌のFKJ-0069、FKJ-0121、FKJ-0154や土壌土壌由来糸状菌であるFKI-8026、FKI-8147培養検体ならびに海洋土壌由来放線菌のKMA-0091、KMA-0092、KMA-0105の培養検体を精製対象候補検体として選択した。糸状菌FKJ-0069培養物、糸状菌FKJ-0154培養物、糸状菌FKI-8026培養物、糸状菌FKI-8147培養物から単離した活性物質はcitrinin、tanzawaic acid類、sclerotiorin、sclerotioramineとそれぞれ同定した。しかしながら、海洋土壌由来放線菌のKMA-0091、KMA-0092、KMA-0105培養物からは活性物質の取得には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度も引き続いて、薬剤耐性を持たない黄色ブドウ球菌RN4220にpND50(E. coli-S. aureus shuttle cloning vector)を用いてプロモーター領域を含むaac(6′)-Ie/aph(2″)-Iaを形質転換し、二機能酵素発現株を樹立した形質転換体およびRN4220にpND50ベクターのみを形質転換した形質転換体を検定菌として、連携研究者により調製・供給される微生物培養液サンプルを用いて、アルベカシン耐性克服活性を有する微生物培養液の選択を行う。さらに、選択された微生物培養液についてアルベカシン耐性克服活性物質を単離、構造解析した後、in vitroでアルベカシンを修飾して不活性化する酵素である二機能酵素活性試験を実施し、二機能酵素阻害活性を検証する。2018年度に単離、構造解析された活性物質については、その活性物質の誘導体を培養液より探索し、より強力なアルベカシン耐性克服活性を有する活性物質の取得も試みる。活性物質選択後は、in vitro二機能酵素阻害活性の詳細な検討およびアミノグリコシド併用時における各種二機能酵素生産菌に対する抗菌スペクトルを測定する。これらの試験によって優れた活性を示した活性物質については、連携研究者らによるアミノグリコシドを併用したマウス感染モデル系での治療効果を検討する。
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