研究実績の概要 |
2019年度は、昨年度同様に連携研究者によって調製・供給されたおよそ1,000検体の微生物培養液サンプルを用いてスクリーニングをさらに行った。すなわち、薬剤耐性機構がない黄色ブドウ球菌RN4220にpND50(E. coli-S. aureus shuttle cloning vector)を用いてプロモーター領域を含むaac(6′)-Ie/aph(2″)-Iaを形質転換し、二機能酵素発現株を樹立した形質転換体およびRN4220にpND50ベクターのみを形質転換した形質転換体を検定菌として、アルベカシン耐性克服活性を有する微生物培養液を選抜した。本年度は糸状菌FKJ-0040株、FKJ-0035株、FKJ-0169株を培養し、活性物質の単離、同定を試みた。Penicillium sp. FKJ-0040株培養物からの活性物質の同定:ABK耐性克服活性物質として各種クロマトグラフィーにより5化合物を単離した。その一つを各種機器分析の結果からα-cyclopiazonic acidと同定した。本物質は筋小胞体Ca2+ATPアーゼ可逆的阻害剤としての報告があるが、ABK耐性克服活性の報告はない。他4化合物は構造解析中であるが、量上げが必要である。この5化合物はそれぞれABK耐性克服活性を示し、3~100倍の選択性を示した。Penicillium sp. FKJ-0035株培養物からの活性物質の同定:各種クロマトグラフィー・機器分析の結果から、ABK耐性克服活性物質として1化合物を単離し、communesin Bと同定した。Communesin Bはアルカロイドの一種で殺虫活性の報告があるが、ABK耐性克服活性の報告はない。Penicillium sp. FKJ-0169株からの活性物質の同定:ABK耐性克服活性物質として4化合物を単離した。うち1化合物をcytochalasin類と推定した。分子量で該当するcytochalasin類はないため新規の類縁体の可能性があるが、正確な構造解析には量上げが必要である。
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