研究実績の概要 |
平成29年度は、主にNeu5Gc含有糖鎖プローブの合成とそのライブラリー作製を行った。具体的には、我々がこれまで独自に開発した糖鎖クラスター合成技術や組換え糖転移酵素発現技術などを駆使することで、異種抗原型糖鎖“N-グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)”を特異的に認識するインフルエンザウイルス(馬インフルエンザウイルスなど…)に結合親和性を有するNeu5Gc含有糖鎖プローブの合成を行った。結果として、納豆菌が産生するγ-ポリグルタミン酸(γ-PGA)にNeu5Gcα2,3LacNAc配糖体を多価に配位した新規糖鎖プローブ『poly[Neu5Gcα2,3LacNAc-β-O(CH2)5NH-/γ-PGA]』を合成することに成功した。また、本糖鎖プローブの各種類似体を合成することで糖鎖ライブラリーを作製した。これら種々の糖鎖プローブを用いて、3種類の馬インフルエンザウイルス(A/Ibaraki/1/2007、A/Yokohama/aq13/2010、A/Richmond/1/2007)に対する結合親和性の評価を、赤血球凝集抑制試験によって行った。その結果、poly[Neu5Gcα2,3LacNAc-β-O(CH2)5NH-/γ-PGA]は用いた3種類全ての馬インフルエンザウイルスと赤血球との凝集反応を抑制する効果があることを実証した。つまり、poly[Neu5Gcα2,3LacNAc-β-O(CH2)5NH-/γ-PGA]が馬インフルエンザウイルス表面の糖結合性タンパク質であるヘマグルチニンと構造特異的に結合するということを明らかにした。現在、本研究において馬インフルエンザウイルスに構造特異的な結合親和性を示した糖鎖プローブ{poly[Neu5Gcα2,3LacNAc-β-O(CH2)5NH-/γ-PGA]}を用いて、馬インフルエンザウイルスを吸着濃縮可能な糖鎖固定化微粒子表面の作製を試みている最中である。
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