研究実績の概要 |
イネのジテルペン系ファイトアレキシン(DP)はいもち病感染やUV、塩化銅処理等のストレスに応答して生合成されること、抗菌活性のみならず雑草に対する成長抑制活性を有することが報告されている。我々は最近、DP生合成のキーとなる転写因子DPFをイネより見出し、DPF高発現(OX)イネではDP生合成遺伝子群の転写活性化を介してDPを蓄積するのに対し、DPFノックダウンイネでは根において逆にDP生合成遺伝子の発現レベル及びDP蓄積量がWTよりも低下することを明らかにしている(Yamamura et al., 2015)。 本研究では、まず、上記のストレス応答的なDP生合成がDPFに依存しているのかどうか?という疑問に対し、DPFノックアウト(KO)イネを用いて、塩化銅、UV、いもち病菌感染ストレスによるストレス応答的なDP生合成について、それぞれDPFに依存することを明らかにした。つぎに、DPFはストレス抵抗性に関与しているか?という疑問に対しては、紋枯病、トビイロウンカ、オカボノアブラムシ(高知大学手林博士の協力)、雑草、UV、塩化銅に対する抵抗性についてはWTと顕著な差は見いだせなかった。一方、DPFがいもち病抵抗性に関与していることを、KOイネを用いて明らかにした。そこで、DPFの下流のDPがいもち病抵抗性に関与しているのかどうかを明らかにするために、4種のDP生合成初期遺伝子(CPS2, CPS4, KSL7, KSL4)のKOイネをCRISPR/Cas9法により2種類ずつ作出することを試み、それぞれのホモ型変異系統を取得し採種した。取得したCPS2及びCPS4のノックアウトイネに塩化銅処理を行ったところ、それぞれファイトカサン(PCs)、モミラクトン(MLs)の蓄積が認められなかったことから、ノックアウトが想定通りに機能していることが示された。
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