研究課題/領域番号 |
17K07788
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
庭野 吉己 東北大学, 歯学研究科, 教授 (40375184)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ポリフェノール / プロアントシアニジン / 抗炎症効果 / 卵巣摘出マウス / 抗肥満 / 抗骨量減少 |
研究実績の概要 |
カテキンのオリゴマーから成るプロアントシアニジンは、非常に高い抗酸化活性をするポリフェノールである。我々は、プロアントシアニジンを高含有するブドウ種子エキス(grape seed extract, GSE)の短時間処理が直接的な抗酸化活性に依存せずに過酷環境下におかれたヒト歯肉線維芽細胞 (hGF)を保護する作用を有すること、および経口摂取で腸内細菌叢を改善することを見出した。そこで、本研究ではGSEによる口腔内炎症性疾患の予防・改善作用と腸内細菌叢を介した高脂血症、糖尿病といった代謝性疾患の予防・改善作用を検証し、将来的には機能性表示可能なdual functionalサプリメントとしての効能を確立することを目的とする。 本年度は、hGFに歯周病の原因菌であるPorphyromonas gingivalis 由来のlipopolysaccharide (LPS)で刺激した時に起こる炎症応答の指標としてinterleukin 8 (IL-8)の産生増強をタンパク質レベル (ELISA)および遺伝子レベル (qRT-PCR)で確認するとともに、hGFを予め1分間 GSE で1分処理すると、このIL-8の産生増強が濃度依存的に抑制されることを見出した。この成果は、高齢者の口腔内におけるGSEの短時間処理が細菌性刺激等による炎症応答の誘発を抑制する可能性を示唆するものである。加えて、in vivoでは卵巣摘出(卵摘)マウスにGSEを連日経口投与すると卵摘による体脂肪および内臓脂肪の増加に起因する肥満を抑制するのみならず、卵摘による耐糖能の低下および腰椎骨量の減少のいずれも抑制する効果を発揮することを見出いした。これら効果がGSEの抗炎症効果によるものか、あるいは腸内フローラの変化を介し発現したのかについては、次年度の検討課題とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
In vitro ではGSE短時間前処理によるhGFのLPS誘導性炎症応答の抑制効果を確認することで高齢者の口腔ケアへの応用の可能性が現実性を増したと判断した。In vivoでは卵巣摘出マウスでの肥満、耐糖能低下および骨量変動などの代謝的変化をGSEの反復経口投与は抑制することを見出し、GSEの経口摂取は閉経女性の各種代謝性変化を抑制・改善する可能性があることを確認した。 今後は、前者では安全性を確認するとともにin vivoでの口腔内炎症モデルを構築し、その効果を検証していく。後者ではin vivoでのGSEの効果がin vitro でみられたGSEの抗炎症効果によるものなのか、あるいは仮説として立てた腸内フローラの変化を介したものなのかの検討に入るので、全体として概ね順調に推移していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
口腔ケアに関する研究では、in vivo動物モデル作製を目標とする。ラット、マウス等の齧歯目にLPSやtumor necrosis factor α(TNF-α)、IL-1などの炎症性サイトカインを負荷し、炎症が誘導されるかを確認する。必要に応じて老化促進マウスなどの特殊動物を用いる。GSEの口腔内での安全性に関しては、ハムスターの頬袋をin vivoでの口腔粘膜モデルとし、GSEの局所刺激性を検討する。またラット全層皮膚欠損創モデルなどを用いて、損傷部位に対する局所毒性も検討したい。 代謝性疾患に関する研究では、卵巣摘出マウスでみられたGSEの肥満、耐糖能低下および骨重量減少に対する抑制効果が腸内フローラの変化を介したものか否かを検討する。腸内フローラの変化を介したものである可能性を示唆する結果が得られた場合には、糞便移植等の実験で検証していく予定である。腸内フローラの変化を介すると結論できた場合は、詳細な作用機構の検討に入る。
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