研究課題/領域番号 |
17K07789
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研究機関 | 宮城学院女子大学 |
研究代表者 |
後藤 知子 宮城学院女子大学, 生活科学部, 准教授 (00342783)
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研究分担者 |
白川 仁 東北大学, 農学研究科, 准教授 (40206280)
駒井 三千夫 東北大学, 農学研究科, 教授 (80143022)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 亜鉛欠乏 / 妊娠期 / ラット |
研究実績の概要 |
必須微量元素の1つである亜鉛は、胎児の発育にも必要であり、妊娠期は亜鉛摂取量を増やすことが推奨されている。しかし我が国では近年、食生活の偏りなどにより潜在的な亜鉛欠乏が増えているといわれている。特に若年女性で「やせ」割合が高いことが報告され、妊娠期の潜在的亜鉛欠乏は多いと考えられる。妊娠期の重篤な亜鉛欠乏は、遷延分娩・低出生体重児の出産などが報告されてきたが、妊娠期の潜在的亜鉛欠乏が育児行動に及ぼす影響は明らかではない。また、うつ病患者で血清亜鉛濃度が低下していることが報告されており、妊娠期・授乳期の潜在的亜鉛欠乏に起因し産後うつを発症する可能性も考えられる。しかし、妊娠期の潜在的亜鉛欠乏がホルモン分泌に及ぼす影響は明らかではない。そこで妊娠期ラットをモデルとし、妊娠期の潜在的亜鉛欠乏が育児行動およびホルモン分泌に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。SD系雌ラット(妊娠1日齢)に、妊娠期を通して亜鉛添加食(Zn-Suf)または低亜鉛食(Low-Zn)を自由摂取させたZn-Suf群・Low-Zn群を設けた。昨年度は、妊娠期の潜在的亜鉛欠乏で育児放棄様行動(授乳を行わない、接触の欠如など)が観察された個体が認められた。本年度は育児行動変化の機構を探るため、産後(授乳期)ラットの血漿オキシトシン(子宮収縮・乳汁射出のほか母性行動や食塩摂取にも関わる)・コルチコステロン濃度を測定した。その結果、Zn-Suf群に比べLow-Zn群で、血漿コルチコステロン濃度は有意に高く、血漿オキシトシン濃度は低い傾向が認められた。したがって妊娠期の潜在的亜鉛欠乏でオキシトシン分泌が低下し育児放棄様行動が観察された可能性も考えられた。授乳時の血漿オキシトシン濃度はパルス状に変動するためか、Zn-Suf群の血漿オキシトシン濃度は個体差が大きかった。今後は採血のタイミングなど詳細な検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
授乳時の血漿オキシトシン濃度はパルス状に変動するためか、Zn-Suf群の血漿オキシトシン濃度の個体差が大きかった。したがって、妊娠期ラットの行動を暗視野ビデオ撮影装置で記録観察し、個体ごとに行動追跡して採血することが必要であった。しかし、飼育実験を行っていた動物飼育室の暗幕カーテンの不調により、ライトコントロール(暗期:明期=12h:12h)における暗期維持が懸念されたことから、暗幕カーテンを修理していただいた。したがって、改めての検討が必要となり、予定していた項目が測定できなかった。しかしながら、本課題申請時から「研究が当初計画どおりに進まない時の対応」として想定していた、既存のサーモグラフィーによる「体表温度の測定」は実施できたので、「やや遅れている」と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)血漿ホルモン濃度の測定 妊娠期~授乳期ラットより採血し、血漿オキシトシン・オレキシン・メラトニン濃度など、血漿中のホルモン濃度を測定する。
(2)体表温度の測定 妊娠期の潜在的亜鉛欠乏が体表温度に及ぼす影響を測定するため、既存のサーモグラフィ―を用いて追跡する。すでに予備検討は済んでおり、育児行動と体表温度の関係を、詳細に解析することとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
飼育実験を行っていた動物飼育室の暗幕カーテンの不調により、ライトコントロール(暗期:明期=12時間:12時間)における暗期維持が懸念され、暗幕カーテンを修理していただいた。したがって、課題遂行に必要な実験が遅れ、次年度使用額が生じてしまった。次年度は、遂行できなかった詳細な追跡観察とともに、血漿中の各種ホルモン濃度を測定するため、使用を計画させていただいた。
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