研究課題
我が国では近年、食生活の偏り等により潜在的な亜鉛欠乏が増えているといわれている。必須微量元素のひとつである亜鉛は、胎児の発育にも必要であり、妊娠期は亜鉛摂取量を増やすことが推奨されている。しかし妊娠期は悪阻などで食欲不振を呈することも多く妊娠期の潜在的亜鉛欠乏は多いと考えられる。妊娠期の重篤な亜鉛欠乏では遷延分娩・低出生体重児の出産などが報告されてきたが、妊娠期の潜在的亜鉛欠乏が育児行動に及ぼす影響は明らかではない。うつ病患者で血清亜鉛濃度が低下していることも報告されており、妊娠期の潜在的亜鉛欠乏に起因し産後うつを呈する可能性も考えられる。しかし妊娠期の潜在的亜鉛欠乏がホルモン分泌に及ぼす影響も明らかではない。本研究ではこれまで、妊娠期ラットの潜在的亜鉛欠乏が育児行動・ホルモン分泌に及ぼす影響を明らかにするため、妊娠期ラットに亜鉛添加食(亜鉛添加食群)または低亜鉛食(低亜鉛食群)を給餌し検討した。その結果、低亜鉛食群では出産後に育児放棄様行動(授乳を行わない、接触の欠如など)が観察された個体を認めた。出産後の血漿オキシトシン・コルチコステロン濃度をELISA法で測定した結果、亜鉛添加食群に比べ低亜鉛食群で血漿コルチコステロン濃度は有意に高く、血漿オキシトシン濃度は低い傾向が認められた。すなわち、妊娠期の潜在的亜鉛欠乏でストレス応答が生じたこと、ストレス負荷やオキシトシン分泌低下が育児放棄様行動の一因となった可能性が考えられた。そこで最終年度では、妊娠期の潜在的亜鉛欠乏が妊娠期の母体に及ぼす影響を探るため、非侵襲的手法を用いて追跡した。オキシトシン欠乏マウスの低温曝露は、野生型マウスに比べて低体温であったことが報告されている。そこで、妊娠期ラットの体表温度を出産直前まで非侵襲的に経日的測定した。その結果、低亜鉛食群では亜鉛添加食群に比べ出産直前まで体表温度が有意に低かった。
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