本年度は,フラクトオリゴ糖(FOS)摂取時のIgA分泌応答を腸管透過性,粘膜組織でのサイトカイン,pIgR発現量から解析した。FOS摂取初期(3,7日間)の盲腸IgA濃度は,対照に比べ10-20倍上昇したが,盲腸粘膜のIgA形質細胞数とpIgRタンパク質の増加が認められたのは7日目で,3日目ではpIgRタンパク質の増加のみ有意であった。サイトカイン発現量は,3日目でIFN-γ,TNF-α,TGF-βが,7日目ではこれらに加えIL-10,12,17の有意な上昇を示した。FOS摂取7日目には,尿中Cr-EDTA排泄量の有意な増加,MLNへの細菌透過の顕在化,盲腸組織MPO活性の有意な上昇が認められた。一方,FOS摂取56日目の盲腸IgA濃度は対照と差がなく,FOS摂取初期に認められた一連の応答はすべてキャンセルされた。明らかに,FOS摂取初期のIgA分泌促進作用には腸管透過性の更新に伴う軽度な粘膜炎症が関与すると考えられた。この腸管透過性の更新を惹起する要因の候補として胆汁酸,腸内細菌叢および有機酸の解析を行った。胆汁酸分析の結果,胆汁酸濃度はFOS摂取群でむしろ低下してた。腸内細菌叢は摂取期間の延長とともに変化するものの,種多様性(Chao1 index)は摂取期間を通じて,対照に比べ同程度の低値を示しており,種多様性の低下は透過性の亢進とは無関係であると考えられた。一方,盲腸内のpHおよび有機酸パタンは透過性の亢進とリンクしており,FOS摂取によるdysfermentationが腸管透過性の亢進に関与すると考えられた。
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