加齢に伴い増加する疾病の原因として,体内で不溶化したタンパク質の蓄積(アミロイド形成)がある。したがって,アミロイドの形成を抑制する食品機能成分は,加齢性疾患の予防や進行抑制に有効に働き健康寿命の延伸効果が期待できる。 本研究では,主要なアミロイド形成タンパク質の一つであるトランスサイレチン(TTR)に注目した。TTRはチロキシンを輸送する重要なタンパク質であるが,容易に変性しアミロイドを形成することによりアルツハイマー病や変形性膝関節症に関わることが示されている。 食品機能成分のTTR安定化効果をthermal shift assay法で検討した結果,ポリフェノール類やその代謝物に安定化作用を見出した。酸変性に対する安定化効果についても検討した結果,同様に安定化作用を示した。これらの成分のうち幾つかについては老化促進マウス への経口投与実験で評価した。その結果,ローズマリーに含まれるカルノシン酸(CA)が脳機能保護効果を示し,脳内でのTTR沈着(アミロイド形成)を抑制した。一方,エクオールについては明確な脳機能保護効果やTTR沈着抑制効果は認められなかった。これらの違いは,生体内での利用性が関係していると考えられる。変形性膝関節症については,両成分共に明確な効果は認められなかったが,対照群に比べ若干進行が抑制されていた。また,TTR安定化効果の無い機能成分の中に,脳でのTTR沈着を抑制するものを見出した。免疫組織化学的手法により検討した結果,この機能成分は脳での炎症に関わるミクログリアの活性化を抑制していた。したがって,ミクログリアの活性化を抑制することにより脳でのTTRの変性を抑制し,TTRの沈着抑制につながることが示された。
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