研究課題/領域番号 |
17K07792
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
西 甲介 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (80578097)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 魚油 / アレルギー / DHA / 脱顆粒 / 花粉症 / 代謝物 |
研究実績の概要 |
魚油にアレルギー症状を緩和する効果があることが示唆されているが、詳細については未だ明らかになっていない。申請者は、魚油に含まれる多価不飽和脂肪酸の一つであるドコサヘキサエン酸(DHA)に着目し、下記の検討を行った。 ラット好塩基球細胞株RBL-2H3細胞を好塩基球/マスト細胞のモデルとして培養細胞系の実験に用い、DHAが当該細胞の脱顆粒反応に及ぼす影響を検討した。その結果、DHAの脱顆粒反応抑制効果は極めて弱いことが明らかになった。そこで、ヒト体内で生成するDHA代謝物を有機化学的手法で合成して、上記と同様の実験を行った。その結果、脱顆粒反応抑制効果がDHA代謝物の一つに認められた。この結果から、魚油の抗アレルギー効果は、DHAを摂取後、DHAが体内で代謝されて別の化合物に変換され、それが効果を発揮すると推察された。 次に、このDHA代謝物が培養細胞レベルだけでなく、生体レベルでも抗アレルギー効果を発揮するのか検証するために、マウスにDHA、またはDHA代謝物を5日間経口投与した後、受動皮膚アナフィラキシー反応を誘導した。その結果、DHA代謝物投与群マウスのアレルギー反応は、対照群(水を経口投与)マウスのそれと比べて有意に緩和されることを確認した。また、DHA投与群マウスのアレルギー反応は、対照群マウスのそれと比べて有意ではないものの緩和傾向にあることを確認した。 さらに、このDHA代謝物の構造を改変したDHA代謝物誘導体を種々合成した。また、DHAを他の脂肪酸に置き換えた脂肪酸代謝物も種々合成した。今後、これら化合物の脱顆粒反応への影響、および受動皮膚アナフィラキシー反応への影響を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画で2017年度に実施する内容について概ね検討したが、血中のDHA代謝物の精製方法の確立と機器分析の条件設定については、年度内に完了しなかった。 2017年度の研究の実施によって、1)DHAを摂取後、ヒト体内で生じるDHA代謝物の一つがラット好塩基球細胞株RBL-2H3細胞の脱顆粒反応を抑制すること、2)当該DHA代謝物を経口投与したマウスは、経口投与しなかったマウスと比べて、受動皮膚アナフィラキシー反応が有意に軽減されること、3)DHAを経口投与したマウスは、経口投与しなかったマウスと比べて、受動皮膚アナフィラキシー反応が軽減される傾向にあること、の3点を明らかにすることができた。また、構造を改変したDHA代謝物誘導体、および、DHAを他の脂肪酸に置き換えた脂肪酸代謝物を種々合成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に完了しなかった研究計画に加えて、今年度の研究計画を予定どおり実施する。受動皮膚アナフィラキシー反応とは異なるアレルギーモデルとして、花粉症モデルマウスを作製し、DHA およびDHA代謝物が症状に及ぼす影響について評価する。また、生化学的・薬理学的手法を用いて、DHA代謝物の脱顆粒反応抑制効果のメカニズムの解明を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の想定よりも研究の進捗が遅れたため、本来購入するべき試薬等の購入に至っておらず、当該助成金が生じた。翌年度分と合わせて、実験動物、試薬、投稿論文投稿費用などに使用する計画である。
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