研究課題/領域番号 |
17K07794
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
光武 進 佐賀大学, 農学部, 准教授 (10344475)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | インクレチン / GPR120 / T1R2 / T1R3 / phytosphingosine |
研究実績の概要 |
本研究課題では、食品中に含まれる細胞膜機能制御分子が、メタボリックシンドロームの発症と深い関わりを持つインクレチンシグナリングにどの様な影響を与えるのか、分子レベル/細胞レベルで明らかにしたい。まず、インクレチンシグナリングを担う長鎖脂肪酸/GPR120シグナリングに焦点を当て、その活性評価系の確立と細胞膜機能制御を介し脂肪酸/GPR120シグナリングを制御する食品分子の探索を行い、細胞膜機能制御を介したインクレチンシグナリングの制御に関わる分子群の全容を掴む。これら分子群の詳細な作用メカニズムを明らかにすると共に、甘味受容体であるT1R2/T1R3をターゲットにしてこれらの分子の受容体に対する特異性も詳細に検討する。本年度は、脂肪酸/GPR120シグナリングの新規活性化検出方法の検討を行った。近年開発されたorphan GPCRの活性化検出法であるTGFα-shedding assayをGPR120に応用し定量性の高い活性化検出方法を確立した。本方法を用いて、様々な脂質がGPR120を活性化するかどうかを検討した結果、酵母の細胞膜に多く含まれるphtosphingosineがGPR120の新規リガンドとなる事を発見した。最近報告されたドッキングシュミレーションでGPR120のアミノ酸の一部がカルボキシル基と水素結合を形成する事が示された。phytosphingosineはカルボキル基を持たず、今までと全く違ったリガンド結合様式を持っている可能性があり興味深い。一方、甘味受容体T1R2/T1R3の研究では、それぞれの受容体を安定発現させた細胞を作製した。本年度は初年度にも関わらず、GPR120の研究では実験系を確立し、新規天然リガンドを見出す事に成功した。本研究は計画通り順調に遂行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究初年度で、実験系の確立を主たる目標にしていた。しかし、GPR120の研究では、新たな天然リガンドを見出すに至った。一方、甘味受容体T1R2/T1R3の実験でもこれら受容体の安定発現細胞を作製し、実験系がほぼ確立しつつある。これらの事から判断して、研究は当初の計画通りに順調に遂行できていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は実験系の確立が主たる目標であったが、これを順調にクリアしている。今後は、脂肪酸/GPR120シグナリングに影響を与える分子群の作用機序の解明と共に、一方で、その作用の特異性や選択制を明らかにする必要がある。一方、甘味受容体は、大きな細胞外領域を持ち、様々なリガンド結合領域を持つ事が知られている。これによって広いリガンド特性を持っており、食品中にはこれまで知られていない弱い結合を持った甘味成分が複数存在すると考えられている。T1R2/T1R3の活性検出方法を確立し、新規甘味物質の同定に繋げたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は研究が順調に進行し、当初予定していた使用額を下回った。次年度からは、研究を大きく発展させる為に、これを有効に活用したい。
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