研究課題/領域番号 |
17K07795
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
加治屋 勝子 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 講師 (00379942)
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研究分担者 |
南 雄二 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 准教授 (90253913)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | マイクロドメイン / カベオラ / ラフト / 血管 |
研究実績の概要 |
狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などに代表される血管関連疾患は、突然死の主原因として恐れられており、我が国の死因の上位を占めている。特に、日本人に多く発症する血管攣縮は、痙攣したように突発する血管の異常収縮のことで、これらの病的シグナル伝達に、コレステロールが限局的に蓄積したカベオラやラフトなどの細胞膜ドメインの関与を世界で初めて発見した。血管攣縮の特効薬は見出されていないため、発症後の医薬品による治療では間に合わない場合も多く、異常収縮そのものを予防することが不可欠であるといえる。我々は、独自に開発した多検体スクリーニング(特許出願済)により、血管の収縮・弛緩をコントロール可能な食品を突き止め、その活性成分を発見した。本研究では、病的シグナル伝達の反応の場である細胞膜ドメイン制御に焦点を当て、食品成分による血管異常収縮の予防メカニズムを解明することを目的としている。 これまでに、各種顕微鏡を用いて膜ドメインを直接的に視覚化するため、蛍光顕微鏡を用いて細胞膜ドメインの局在を観察した。マーカータンパク質としてはカベオラはカベオリン、脂質ラフトはフローチリンを用いた。また、透過型電子顕微鏡を用いてカベオラ及び脂質ラフトの測定条件を最適化して観察したところ、カベオラの挙動解析に成功した。さらに、走査型電子顕微鏡を用いて細胞膜ドメインの膜表面構造を観察した。 平成30年度においては、生きた血管平滑筋を用いて分子間相互作用解析をおこなうため、センサーチップに生きたままの細胞を固定する条件を確立し、測定温度やpH等の条件検討をおこなった。これにより、再現性の高いデータ取得に成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまで、食品由来の新規成分による血管異常収縮の予防メカニズムを解明するため、コレステロールが限局して蓄積した細胞膜ドメインに焦点を当て、膜ド メインのダイナミクス制御の解明に取り組んできた。研究代表者(加治屋)と研究分担者(南)は協力し合い、研究計画に沿って研究を遂行できており、各種顕微鏡による細胞膜ドメインの視覚化の成功や新たな知見を得ることができ、膜動態解析をスムーズに遂行することができた。 平成30年度は、血管の収縮と弛緩を調節するために重要な血管内皮細胞の機能に着目し、一酸化窒素産生能を向上させる農産物として桜島大根を発見した。また、その活性成分としてトリゴネリンを同定し、作用メカニズムを明らかにした。トリゴネリンは、桜島大根の根だけではなく葉にも同程度の量が存在しており、調理・加工による影響についても明らかにすることができた。さらに、生きた血管系細胞と病的シグナル分子との相互作用解析に成功し、た。以上の事より、本研究は概ね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、生きた血管平滑筋を用いて分子間相互作用を解析し、膜ダイナミクスへの影響を調べてきた。研究代表者(加治屋)は、生きたまま細胞をセンサーチップに固定する手法を確立している。測定温度やpH等の条件検討を行い、生きた細胞の安定した固定方法により、再現性の高いデータ取得が可能となった。 今後は、血管関連疾患のキー分子であるFynが食品成分の影響をどのように受けるのか、その局在への影響などについて明らかにする。既に、独自開発した細胞膜ドメインのモデル膜としてハイブリッドリポソームの作製に成功しており、これを用いて、Fynの活性化の制御機構についても明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬や器具類について、キャンペーン期間中の購入やまとめ買いにより当初予定金額よりも安く購入できたため、差額が生じた。翌年度の研究計画に変更はなく、当該差額分 を合わせて、計画的に予定通り実施する。
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