研究課題/領域番号 |
17K07802
|
研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
長田 恭一 明治大学, 農学部, 専任教授 (30271795)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | コレステロール酸化物 / 蓄積 / 体内動態 / ラット |
研究実績の概要 |
食品中のコレステロールは、加熱等の加工や長期間保存により、酸化されてコレステロール酸化物(COP)を生じる。COPを摂取すると脂質代謝が変動したり動脈硬化等の疾病を発症するリスクが高まる。本年度研究では、COP摂取後の生体内分布について検討した。 5週齢Wistar系雄ラットに、0.5%COPを含む飼料を10日間与え、種々の組織内のCOPレベルを測定した。その結果、COPを投与しなかった場合と比べて、肝臓と血漿では主要なCOP分子種レベルが高くなり、特に、動脈では7-ketocholesterolと6-ketocholestanolのレベルが高くなったので、keto型COPの蓄積による動脈硬化発症リスクが高まると予想された。さらに、腎臓や心臓、皮下及び内臓脂肪組織からもCOPが検出された。また、検出されたCOP分子種の各レベルに違いがあったので、生体内ではCOP蓄積については部位特異性があると考えられた。 次に、6週齢Wistar系雄性ラットにCOPを経口投与し、7日間の経日的なCOP体内動態及び各組織への蓄積性を検討した。その結果、血漿、VLDL、LDLでは、経日的にCOPレベルが増大した。一方、肝臓及びHDLでは、投与前と比べてCOP投与後1日目でCOPレベルが最大値となり、その後経日的に減少したが、HDLのCOPは7日目でもウォッシュアウトされなかった。各組織では、排出されやすいCOP分子種とそうではない分子種に分かれることが明らかとなった。よって、食事から摂取したCOPは小腸で吸収された後にリポタンパク質を介して全身へ運ばれること、また、種々のCOP分子種の中でも7β-hydroxycholesterol、cholestantriol、6-ketocholestanol及び7-ketocholesterolは各臓器から排出されやすい可能性が明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の最大の目的であったコレステロール酸化物の蓄積性について、比較的長期の投与及びショットで投与しての経日的変化は明らかとなり、脳における移行蓄積の有無を調べるのみとなった。一方、高感度分析についてはGCMS分析での誘導体化の改変についてはほぼ明らかとなったが、蛍光誘導体化によるHPLC分析については不明な点が残っており、概ね順調であると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、コレステロール酸化物(COP)の高感度分析法についての改良を検討する。また、外因性COPの組織蓄積特異性について、脳内への移行の有無、性別ならびに年齢期の異なる場合での変化について調べたいと考えている。一方、COPの有害性、特に脂質代謝に与える作用については種々の知見がある。しかし、その性差は明らかになっていない。ヒトの場合、おそらく男性は中年期に、女性は高齢期にCOPの影響を受けやすいと予想している。そこで、本課題では、年齢の異なる動物にコレステロール酸化物を投与し、脂肪酸およびコレステロール代謝がどのように変化するのか、また、酸化していないコレステロールを与えた場合とどのような違いがあるのかを明らかにしたい。また、これまでに7-ketocholesterolのクリアランス機構を調べてきたが、生体内で高いレベルで検出される5-epoxycholesterolと7β-hydroxycholesterolのクリアランスについても検討したいと考えている。
|