研究課題
第一に、in vivoで、年齢および性の違いによるコレステロール酸化物(Oxc)代謝の変化を検討した。特に、Oxc分子種の中でも生体内で高濃度で検出される7-ketocholesterolに着目し、その代謝の年齢および性の違いによる変化を検討した。その結果、7-ketocholesterolの代謝は性の違いによって変化することが明らかとなり、ラットにおいては雌に比べて雄で7-ketocholesterolが代謝されやすいのではないかと考えられた。次に、in vitroおける年齢および性の違いによる7-ketocholesterol代謝の変化についてそのメカニズムを明らかにするため、肝臓よりミクロソームを調整して検討した。その結果、in vivoで得られた結果と同様にラットの肝ミクロソームにおいても雌に比べて雄由来の方が7-ketocholesterolが代謝されやすいことが明らかとなった。さらに、in vitroでは年齢の違いによる変化も観察された。すなわち、加齢に伴って、7-ketocholesterolは代謝されにくくなることが予想された。一方、Oxcのクリアランスについての情報が乏しいことから、Oxcのクリアランス機構の一つとしてグルクロン酸抱合化に着目した。その結果、Oxcはin vitroではUGT1A3及びUGT2B7の抱合化酵素によって抱合化された。また、Oxc混合物をラットに投与し、生体内組織及び排泄物を解析したところ、一部のOxc分子種のグルクロン酸抱合体が胆汁、血漿、あるいは尿で検出され、ラット生体内においてグルクロン酸抱合体が生成することが明らかになった。さらに、胆汁と尿中に排出されたOxcの抱合体及び非抱合体のレベルを明らかにし、Oxcの抱合化が生体外へのクリアランス機構に寄与している可能性を明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
コレステロール酸化物の誘導体方法の開発が困難であり、HPLCによる微量分析について現在はGCMSを用いた高感度分析方法の開発に変更して研究を進めている。その他の部分は概ね順調であり、脳組織へのコレステロール酸化物の移行性については新たに判明した結果である。
コレステロール酸化物(Oxc)の高感度分析法については蛍光誘導体化が困難であったことからGCMS分析に関する誘導体化の効率化に関して検討を始めている。また、Oxcをラットに投与した場合の生体内の抗酸化システムの変動と炎症反応について検討する予定である。また、in vitroではOxcの炎症誘導作用について、マクロファージが関与する場合、また、消化管でのイベントを予想して明らかにしていく予定である。さらに、2018年度の研究でOxcの一部が脳組織に移行している可能性が示唆された。現在のところ、脳組織に食事由来のOxcが移行するとの情報はない。そのため、ラットにOxc混合物を摂取させた場合の脳への移行蓄積性について検証したいと考えている。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 82 ページ: 716-723
10.1080/09168451.2017.1403888