研究課題/領域番号 |
17K07802
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
長田 恭一 明治大学, 農学部, 専任教授 (30271795)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | コレステロール酸化物 / 脳組織 / 蓄積性 |
研究実績の概要 |
コレステロール酸化物の微量分析方法は誘導体化方法を改変してngオーダーで検出可能なGCMS分析方法を見出した。とくに、コレステロールレベルが高い脳組織のコレステロール酸化物を効率的に定量できる方法を考案した。 一方、外因性コレステロール酸化物の組織移行性について、異系統のラットでの外因性コレステロール酸化物の生体内分布及び蓄積性、特に脳組織への移行性に関する検討した。Wistar系ラットに加えて、小腸上皮細胞のABCG5/8の遺伝子異常により植物ステロールを体内に蓄積しやすいSHRラット及びその対照であるWKYラットにコレステロール酸化物を投与することで、外因性コレステロール酸化物の生体内への取り込みレベルの差異と脳への移行性について解析した。その結果、脳内各部位で神経細胞に対して毒性を示す7β-hydroxycholesterolと7-ketocholesterolのレベルがコレステロール酸化物の投与により高くなった。特に7-ketocholesterolのレベルはSHRラットで高くなったことから、遺伝子発現レベルの低くなっていたABCG1が脳からのコレステロール酸化物の排出に重要な役割を果たしていることが示唆された。また、他のコレステロール酸化物として、cholestanetriol、4β-hydroxycholesterol及び6-ketocholestanolも比較的高いレベルで検出された。 脳機能への外因性コレステロール酸化物の影響を見るために、コレステロール酸化物を投与した際のWistar系ラットの不安様行動について検討した。その結果、対照群と比べてコレステロール酸化物投与群で若干の不安行動が見られた。脳内のコレステロール酸化物レベルはコレステロール酸化物投与で高くなっていたので脳組織内のモノアミン濃度に変化が生じると予想された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コレステロール酸化物の微量分析方法は当初予定していたHPLCを用いたものではなくGCMSを用いた手法となったが、これまでよりもより低い濃度まで検出定量できるようになった。また、外因性コレステロール酸化物の組織移行性については、これまで明らかになっていなかった脳組織への移行性が明らかになり、脳の様々な部位を調べ、脳組織内でも移行性と蓄積性が異なることが判明した。細胞を用いたコレステロール酸化物の炎症誘導性に関する研究は予備段階で終了したので最終年度に明らかにしたい。
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今後の研究の推進方策 |
キサントフモールは脂質代謝調節機能が強く、また、小腸からの有害物質の吸収も阻害すると考えられる。そこで、最終年度はコレステロール酸化物の有害作用に対して、キサントフモールの投与効果を動物実験で明らかしたいと考えている。また、現在遅れているマクロファージに対するコレステロールの炎症誘導作用と、炎症誘導を抑えうる食品成分の検討についても併せて行いたいと考えている。脳組織へのコレステロール酸化物の移行性が明らかになったので、老化促進マウスを用いての脳機能への影響についても検討したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用となった理由は分析条件を検討していた最中にコロナウイルスの状況が悪化してきたので、分析担当の学生の登校を控えたため、分析に関わる試薬等の購入を見合わせたためである。新年度に申請者が代わって、生体サンプルのコレステロール酸化物の分析を行う試薬等を購入して分析する予定である。
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