コレステロール酸化物(COP)は脂肪酸酸化物と比べて小腸より吸収されやすく、リポ蛋白質に組み込まれて末梢組織まで到達する。COPは脂質代謝攪乱作用等の有害な作用を示すので、生体内への取り込みを防止する必要がある。一方、ホップに含まれるキサントフモール(XH)はプレニル基を有する疎水性フラボノイドであり、抗酸化及び脂質代謝調節機能等の有益な生理活性を示。本年度はラットにXHとCOPを同時に摂取させた場合COPによるコレステロール代謝変動が制御されるのか、また、その作用の機序を追究した。5週齢のWistar系雄性ラットに基準食を与えた対照群(C群)、基準食に0.25%のCOP混合物を添加した飼料を与えたCOP群、あるいは基準食に0.25%のCOP混合物とXHを1%添加した飼料を与えたXH群の3群に分けて2週間飼育し、各臓器のCOPレベル、脂質代謝パラメータと糞中のステロイドレベルを測定した。その結果、COP群と比べてXH群では血漿、肝臓、またその他の組織で種々のCOPレベルは低くなり、その一方で糞中に排泄されたCOPレベルはXH群で最も高くなった。COPによるコレステロール異化阻害作用は、XHとCOPを同時摂取した場合に見られなくなった。次に、4週齢のICR系雄性マウスに予め生理食塩水(C群)あるいはXHを胃内強制投与(XH群)し、その後β-sitosterol-d7を含むミセル溶液を胃内に投与した。投与3時間後の血漿と肝臓のβ-sitosterol-d7レベル及び小腸粘膜のコレステロールトランスポーターの遺伝子発現レベルを解析した。その結果、β-sitosterol-d7の生体内への取り込みレベルは血漿と肝臓両者ともにC群よりもXH群で有意に低下した。また、小腸粘膜のNPC1L1のmRNA発現レベルもXHの投与により有意に低くなった。以上の結果から、XHはNPC1L1の発現を抑制して生体に有害なCOPの吸収を阻害したと考えられた。この作用によってCOPによる脂質代謝変動が抑えられたと考えられる。
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