研究課題
米ぬかには不飽和ビタミンEトコトリエノールやフェルラ酸などの機能性成分が多く含まれている。我々はトコトリエノールによるテロメラーゼ阻害を発見し、癌に対するトコトリエノールの有用性を明らかにしてきた。また、米ぬか成分の新規機能性を調べる過程で、トコトリエノールの癌細胞増殖抑制作用をフェルラ酸が相乗的に高めることを世界で初めて報告した。そこで平成30年度では、トコトリエノールの機能を向上させるフェルラ酸類縁体の探索と、トコトリエノールとフェルラ酸による相乗的なテロメラーゼ抑制作用の解析を検討することで、米ぬか成分の高い抗癌活性を実証し、“米成分による癌抑制”の実現に挑むことを目的とした。フェルラ酸はフェニルプロパノイドに分類されるフェノール性化合物である。8種のフェニルプロパノイド類縁体を用いて、トコトリエノールの癌細胞増殖抑制効果を相乗的に高める化合物を検討したところ、カフェ酸やコニフェリルアルコールの効果が顕著であることが明らかになった。特に、コニフェリルアルコールはフェルラ酸よりもトコトリエノールの増殖抑制効果に対して有意な相乗作用を示した。加えて、フェルラ酸がトコトリエノールの細胞増殖抑制作用だけでなく、その他の生物活性にも相乗効果を発揮するかを評価した。その結果、トコトリエノールのテロメラーゼ阻害作用にフェルラ酸が相乗効果を示すことを見出した。以上のことから、米ぬか成分の癌予防への応用に新たな可能性を拓いた。
2: おおむね順調に進展している
フェルラ酸よりも強い相乗効果を発揮する類縁体(コニフェリルアルコール)を見出し、フェルラ酸とトコトリエノールの相乗的なテロメラーゼ阻害作用を明らかにしたため、順調に研究が進展していると言える。
平成31年度には、動物実験によってフェルラ酸の有効性を評価する。ラットにトコトリエノールとフェルラ酸を投与し、臓器と血中のトコトリエノールとCEHC濃度を調べ、フェルラ酸によるそれらの濃度変化を観察する。また、前年度のスクリーニング結果に基づき、効果の高いフェルラ酸類縁体(コニフェリルアルコール)についても同様にトコトリエノールと同時投与し、その有効性を確認する。
研究が当初の計画通りに順調に進んだために残額が発生した。これを次年度の動物実験等に使用する予定である。
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Sci Rep
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